母と4歳で別離、左目を失明…朝ドラ「ばけばけ」で注目される小泉八雲の過酷な幼少期とは

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ハーンは4歳にして、母と別離を余儀なくされて、父方の大叔母ブレナン夫人に引き取られることになった。やがて両親は離婚。ハーンが母と再会することは生涯なかった。

また、7歳のときには、父が昔の恋人と再婚。父と会った回数は生涯を通じて5回程度だったという。

暗闇の部屋で一人ぼっちで寝かされた恐怖

両親ともにつながりを失うことになったハーン。夫から莫大な遺産と屋敷を引き継いだブレナン夫人のもとで、何不自由ない生活を送ることになったが、幸せな幼少期とは言い難かったようだ。

ハーンには乳母がつけられて、ブレナン夫人からは名前ではなく「あの子」と呼ばれたという。一人で部屋に寝かされたことを、ハーンはこう振り返っている。

「これまで、明かりのついた部屋で、乳母と一緒に寝かされたが、六歳頃から寂しい部屋で、独りで寝かされた。暗闇を恐れるから、そんな習癖を矯めるためというので、殊更燈火を置かないで、暖かに寝かされると共に、ランプは退けられ、乳母も行ってしまう」(「夢魔の感触」『影』より)

暗闇を恐れなくなるようにと、部屋を真っ暗にして一人ぼっちにさせるというのは、果たして本人のことを思っての育児といえるのだろうか。少なくとも、ハーンにとっては恐怖体験でしかなかったようだ。自伝『私の守護天使』で次のように綴っている。

「眠りにつく前にお化けに見られないように頭からいつも布団を被った。お化けが布団を引張るように感じたときにはいつも叫んだ」

13歳になると、ハーンは全寮制の学校に入学させられる。ブレナン夫人のもとに、遠縁にあたるヘンリー・モリヌーが出入りするようになったため、ハーンの存在が疎ましくなったのでは、とも言われる。

自分は誰からも必要とされていないのではないか――。そんな思いを抱いたとしてもおかしくはない状況だが、ハーンは学校生活を存分に楽しんだようだ。快活な性格で成績も優秀だったために目立つ存在だったという。

だが、ハーンの前にはまたも困難が立ちはだかる。それも次々に、である。

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