東京近郊で"子育て世帯"の「持ち家率」が高い街はどこ?/"20代単身者"が住宅を購入している街も調べてみた
都心部の動向はさらに複雑です。千代田区、港区、渋谷区では賃貸が圧倒的に優勢なのに対し、中央区と文京区では過半数(54%台)が持ち家を選択しています。中央区にマンションが林立し、ファミリーが「買って住む街」に変貌したことは、本書でもたびたび触れてきました。一方の文京区は、都心に隣接しながら低層住宅地が広く残り、文教地区としての評判も相まって、定住志向のファミリーに支持されているものと思われます。
このように、持ち家率に大きな地域差が生まれるのはなぜでしょうか。その背景には、大きく3つの要因が絡み合っています。
例えば城南エリアの世田谷区では、核家族(夫婦と子ども)世帯に占める世帯年収1000万円以上の割合が47%に達し、足立区(20%)の2倍を上回ります(総務省統計局『令和5年(2023年)住宅・土地統計調査』より。ここでは子どもが家計を支えている世帯は除く)。筆者が4-1で行った推計によると、世帯年収の中央値は世田谷区が900万円台、足立区が600万円台と考えられます。
しかし、不動産価格の差は、所得差をさらに上回ります。2001年以降築の中古一戸建ての取引価格(中央値)は、世田谷区が約9000万円なのに対し、足立区は約4200万円と、2倍以上の差があります(国土交通省『不動産情報ライブラリ』より取引時期2024年4月~2025年3月のデータを参照)。
所得水準が高くても、それを上回る物件が多いエリアでは、購入を断念し、賃貸に住み続けることも合理的な選択肢となりえます。
都心3区(千代田区、中央区、港区)やその周辺では、分譲マンションを購入できる経済力を持ちながらも、通勤時間の節約や質の高い教育環境を優先し、あえて高級賃貸住宅を選ぶという選択肢も考えられます。海外転勤の可能性や、資産形成上の選択から戦略的に賃貸を選ぶ人もいるでしょう。
令和2年(2020年)国勢調査によると、東京23区では30代後半の夫婦+子ども世帯のうち5.5%が、社宅などの給与住宅に住んでいます(全国平均:3.4%)。特に都心周辺の千代田区、港区、目黒区では10%前後という高い水準です。会社の補助で都心周辺の一等地に住めるのであれば、住宅ローンを組む必然性は薄れます。ただし、ここ数年の不動産価格の上昇を鑑みれば、家賃補助を諦めて持ち家を購入したほうが「お得」だった、というケースもあるでしょう。
もう一つの潮流:「資産」として家を買う20代単身者
ここまではファミリー層を中心に見てきましたが、近年、都心部ではもう一つの大きな潮流が生まれています。それは20代単身者の住宅購入です。
株式会社リクルート(SUUMO)「首都圏新築マンション契約者動向調査」(2024年)によれば、住宅購入の理由として「資産として有利だと思ったから」と回答した単身者の割合は、この10年で約30%(2014年)から約48%(2024年)へと大きく増加しました。自身の信用力(与信)を最大限活用し、将来性のある物件を購入することで、若いうちから着実に資産を築きたいという考え方がうかがえます。
こうした背景から、一部の若者の間では、住宅購入を組み込んだ次のような資産形成プランが語られています。



















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