と、カエルドローンの口腔から、赤い舌がぬるりと伸びてきた。
そこから先は、すべてが一瞬の出来事だった。
ドローンは床から勢いよく跳ね上がり、
タッ──。
首謀者の首筋にトゲのようなものが撃ち込まれ、彼は呻き声をあげて卒倒した。
ドローンは四基のプロペラを高速回転させ、一気に加速して廊下の先へ進む。
シッコウ、カンリョウ!
廊下の先には、妙な部屋があった。仕切りのついたデスクが、手前に二台、奥に二台。若い男たちが電話をかけている。“ルーム”だ。彼らは受話器を耳に当てているから、ドローンの存在に気づいていない。
ドローンは部屋の中央で素早く回転した。
タッ、タッ、タッ、タッ。
四本のトゲのミサイルは正確に四人の首筋に刺さり、皆が物言わずデスクへ突っ伏して失神した。
ドローンは部屋の奥に置かれた、ノートパソコンの隣に着陸する。今度は口腔からUSBケーブルが伸びてきて、ノートパソコンの端子に接続された。自動で何か読み込みを始めている。
数十秒後、ドローンはUSBケーブルを口腔へしまうと、デスクから離陸した。ルームから廊下へと飛行していく。
廊下の床には、未だ首謀者が仰向けに倒れている。ドローンは速度を緩めて、首謀者の姿を舐めまわすように映す。白目を剥いて、口から蟹のように泡を吹いて、大の字で四肢をびくんびくんとさせている。
ドローンは首謀者の上を悠々と通り過ぎ、切り抜かれた窓ガラスの隙間から戸外へ出た。
急加速をして、再び都心の青空の中を飛行していく。
上空で大きく旋回し、一瞬、東京湾やレインボーブリッジが映り、臨海公園の大観覧車が映り、次に上空へと聳(そび)えるスカイツリーが映ったかと思うと、
──シッコウ、カンリョウ! シッコウ、カンリョウ!
ぶつり、映像は途切れた。
すべては五分にも満たない時間で行なわれ、健人は放心してもう何も映ってはいない真っ暗な子供テレビを見つめるばかりだった。



















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