「この給料泥棒が!」部下を罵倒し続けた38歳パワハラ上司が"社会的に"抹殺された恐怖の復讐劇 『子供部屋同盟』1章④

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芥川賞作家✕東洋経済オンラインの「異色コラボ」連載小説!
「子供部屋おじさん」が、あなたの復讐、請け負います。パワハラ、詐欺、痴漢冤罪(えんざい)、書店万引き――。裁かれぬ現代社会の悪を、人知れず断罪する者たちがいた。ダークウェブに潜む謎の復讐代行組織「子供部屋同盟」。
社会から疎外された「子供部屋おじさん」たちが、その特異なスキルを武器に、歪んだ正義を執行する。芥川賞作家・高橋弘希が放つ痛快無比の世直しエンタメ『子供部屋同盟』より、第1章を4日に分けて毎日お届けします(今回は4日目)。

黒い男が映し出す西野の姿

太一は自宅アパートのテーブルの前に座り、ノートパソコンを開く。指示された通り、子供部屋同盟内の子供テレビをクリックする。

子供部屋同盟
『子供部屋同盟』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら

ブラウザ内の小さな画面に、映像が流されている。八ミリフィルムのような粗い映像で、時にコマ落ちしたり、時にノイズが交じったりする。

その映像の場所を、太一は知っている。西野の指示で何度か資料を届けに赴いた、川越駅前のロータリーだ。駅構内から、何人もの背広姿の帰宅者が出てくる。

映像はその中の一人を捉え、その一人を追っていく。モスグリーンの背広を着た、体格のよい肩の筋肉の隆起した短髪の男──、西野だ。

おそらく撮影者は、身体のどこかに小型カメラを装着しているのではないだろうか。西野と一定の距離を保ったまま、西野のあとをつけている。

と、一瞬だけカメラが撮影者を映し、彼はぶつぶつと何かを呟いた。顔はよく見えなかったが、浅黒い肌の男だった。暗闇に紛れ、ほとんど黒い男に見えた。

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