たぶん万次郎氏は、何も答えてはくれないだろう。なにせ犯罪行為すら厭(いと)わない集団なのだ。が、意外にも万次郎氏は同盟について詳しく話してくれた。
同盟に入りませんか?
──我々、子供部屋同盟は、首領をトップとして組織化されています。各部署はTOR上のチャットでやり取りをしていて、実のところわたくしも他のかたとはほとんど面識がありません。えぇ、タイソン二世はこと暗殺術に長けてましてね。わたくしが言うのもなんですが、非常に危険で、非常におそろしい男です。
──なぜ金銭ではなく、あのような動機レポートで依頼を請け負ってくれるのでしょう?
──動機は砂金です。
──砂金?
──砂金は我々に、莫大な利益をもたらします。
何やら抽象的な話で、おそらくここはあまり突っ込んではいけないのだろうと察した。
──親切にお答えいただきありがとうございます。あの後、私の劣悪な職場環境は著しく改善し、日々、生きる喜び、働く喜びを感じています。なんとお礼を言っていいものか。
──いえいえ、お礼も何も。すべては、あなたの動機が本当だったからです。もしお礼をしてくれるというなら、そうですね、L38番さん、あなた何か特技はありますか?
──いえ、私はしがない会社員でして、とても人に自慢できる特技などありません。せいぜいプラモデルくらいでしょうか。
──プラモデル?
──はい、学生時分にプラモデルにハマっていまして。いやこれは特技というか、たんなる趣味ですね。
──そのプラモデルのお写真を、何枚かアップロードしてもらえますか?
太一は自身で塗装まで施した1/35スケールの74式戦車の写真を、何枚かアップする。
──L38番さん、あなたも人が悪い。素晴らしい才能をお持ちではないですか。L38番さんも同盟に入りませんか? あなたの才能は、きっと我が同盟に役立つときがくるでしょう。
──私のような者でよければ、ぜひとも。ところでもう一つお訊きしたいのですが、なぜ“子供部屋”同盟なのでしょう?
──それは我々の多くが、すでに大人でありながら、子供部屋に住んでいるからです。
──子供部屋?
──社会から冷遇され続けた子供部屋おじさんのルサンチマンは、ついに臨界点に達したのであります。
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