
画面に映し出された、加藤清美
直人は指示された通り、指定時刻に子供テレビへアクセスした。画面には、混み合った夕刻の電車内の様子が映されている。おそらくは小型カメラの映像だ。
画面中央には、一人の女の横顔が映っている。灰色の髪に濃い化粧、腫れぼったい一重瞼に赤らんだ鼻頭に薄い唇──、加藤清美だ。
と、カメラは角度を下げ、撮影者の手元を映した。親指に金色の太目のリングを嵌めている。ルパン・ダ・サーだ。そしてルパンは数センチの鈍色(にびいろ)の何かを指先に摘まんでいる。カミソリの刃だ。
まさかこの満員電車の中で清美の首筋をカミソリで割くつもりだろうか──、直人は青ざめるも、しかし自分は確かにレベルSではなくAを選んだはずだ。
と、ルパンは電車が揺れた拍子に、清美とはまったく関係ない女子会社員の鞄の側面をカミソリで割いた。
縦一文字の鞄の裂け目から、薄桃色の長財布を抜き取る。すべての作業は一瞬で行なわれ、手品を見ているようだった。




















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