「この給料泥棒が!」部下を罵倒し続けた38歳パワハラ上司が"社会的に"抹殺された恐怖の復讐劇 『子供部屋同盟』1章④

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──かっ、かっ、かっ、かんりょうなのです。

ぶつり、映像は途切れた。

太一は放心して、ノートパソコンの前から動けなかった。

とても現実の出来事とは思えない。映像が不鮮明なこともあり、自主制作の映画でも観せられた気分だった。

その晩はほとんど眠れず、現実感のないままに朝を迎えた。

翌日、職場に西野の姿はなかった。能登(のと)さんが西野のスマホに連絡するも、音信不通だという。太一は心ここにあらずの状態で、その日を過ごした。

児童買春の疑いで逮捕された西野

次の日、営業所のデスクで昼食の弁当を食っている最中に、太一は驚くべき報道をテレビで見る。

会社員の男(38)を児童買春の疑いで逮捕。

──大宮警察署は、川越市××に住む会社員、西野友和(にしの・ともかず)容疑者を児童買春の疑いで逮捕した。西野容疑者は昨年十二月に、SNSで知り合った当時十七歳の女子高校生に金銭を渡してわいせつな行為に及び、その様子をスマホで撮影した疑いが持たれている。同署によると、西野容疑者はおおむね容疑を認めているという。

確かに西野はあの合同懇親会で、出会い系サイトがどうのこうのと言っていたが、まさか未成年を金で買っていたとは思わなかった。あの執行の夜にタイソン二世が西野の懐から持ち去った何かは、つまりは証拠動画が残るスマホだ。そして逮捕されたということは、今ごろ西野は留置場の檻(おり)の中だ──。

翌週、西野は日成台不動産を懲戒解雇された。大手企業でもある日成台不動産が、犯罪者を雇用し続けるわけにはいかない。埼玉西地区を統括する年収一千万の男が、途端に無職になったのだ。いずれニューレジデンスからも追い出されるだろう。

そして今の時代、犯罪者の氏名はネットに残り続ける。日成台不動産にも人事部に素行調査専門の部署があり、前歴者は応募の段階で弾(はじ)かれる。児童買春の刑事罰はそこまで重くはないだろうが、その社会的制裁は計りしれない。

つまり万次郎氏が言うように、奴は社会的に死んだのだ。

翌月、茨城の営業所から江村という男が臨時所長として異動してきた。ヘルニア持ちの初老の男で、言動にまるで覇気が感じられない。

が、結果として太一の就労環境は著しく改善した。もう朝礼で皆の前で人格否定されることはない。社訓写経も、お使いも、草むしりもない。

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