ついに国有化される東京電力 変革までの険しい道のり
一方、”即死”要因とされていた廃炉と除染費用については善後策を打ち出した。東電は今回、この2つの費用については現時点では見積もれないとして事業計画の数値には加えていないが、たとえば廃炉はその方法すら確立されていない作業等もあり、費用が膨大となるのは確実だ。そこで、東電と機構は、政府と「総額が見えたときに追加措置的なものが必要なのかどうか協議する」(西澤社長)方針を明らかにした。もとより、政府内には「そこは最終的に政府が責任を持つことになるのではないか」(民主党関係者)との声もあり、東電単独で膨大な費用を負担する事態は避けられそうだ。
とはいえ、値上げと再稼働の2つが一緒に回らない限り、東電のキャッシュフローが改善することはありえない。即死は避けられたとしても、赤字が続けば財務の毀損は続き、再び政府に出資を仰ぐ事態に陥りかねない。
すでに政府が1兆円の公的資金を東電に突っ込むと決めた以上、血税が無駄ガネにならないためには、とにもかくにも東電が変わるよりほかない。東電は今回、事業計画の中でも「縦割り」「部門主義」「自前主義」などの問題があることを認めたうえで、意識改革を推し進めることも明記した。
(■東電次期社長に決まった廣瀬常務)
その先導役となるのか、新経営陣だ。東電では6月末、新たに下河辺氏が会長に就くほか、廣瀬直己常務が新社長に就任する予定だ。新社長には現経営陣に近い村松衛企画部長を推す向きもあったと見られるが、最終的には廣瀬氏が昇格した。福島第一原発事故後、損害賠償問題に携わってきた実績が買われたわけで、廣瀬氏は東電内では比較的「改革マインドがある」(関係者)とも評される。実際、8日の交代会見では「東電も少し変わってきたな、と思われるように社長が先頭に立って頑張っていきたい」と意欲を示した。