ついに国有化される東京電力 変革までの険しい道のり
こうした複数の施策によって、東電は当面の事業に必要な資金を調達できるだけでなく、早ければ来14年3月期にも営業黒字に戻る見通しだ。同時に機構経由で政府へ借金も順次返済。10年代半ば以降には社債の再発行も目指すとしており、政府は経営改革のメドがつくか、独自での資金調達が可能になったと見極めた時点で、議決権比率を2分の1から減らし、一時的公的管理状態を終結する、とのシナリオを描く。
が、現時点ではこのシナリオは夢物語に近いとも言える。
今回、東電再生のカギを握るのは値上げと柏崎刈羽の再稼働に尽きる。値上げについてはすでに4月から法人向けを実施しているが、昨年末の西澤社長による「値上げは事業者の権利」発言が一人歩きしたこともあって、4月更新の事業者5万件のうち、いまだ1万数千件は値上げに同意していない状態だ。
規制部門はさらにハードルが高い。料金値上げを実施するには、公聴会などの実施を経て最終的には経済産業相の了承が必要だ。東電に対する国民のイメージが地に落ちている状態では国民からの反発は必至。枝野経産相もこうした社会情勢を認識しており、「電気事業法に基づいて厳正に審査する」と容易には与しない姿勢を示している。
再稼働もしかりだ。現在、政府は関西電力の大飯原発3、4号機の再稼働に向け、地元の了承を得るべく動いているが、これですら夏までに稼働できるかどうか微妙な情勢。となれば、事故を起こした事業者の再稼働を地元はおろか、国民が受け入れるとは考えにくい。
加えて、今後は新設予定の原子力規制庁が再稼働に向けての審査などを手掛けることとなっているが、規制庁の発足時期も未定なうえ、全国には柏崎刈羽のほかに40基近い原発が再稼働を待ち構えている。よほど政府が強く押し進めないかぎり、東電単独で来春再稼働に持ち込むのはほぼ不可能と見ていいだろう。