ついに国有化される東京電力 変革までの険しい道のり
「これが画に描いた餅にならないように努力をしないといけない」。5月9日、枝野幸男経済産業相から東京電力の将来的なあり方をまとめた「総合特別事業計画」(事業計画)が承認されたことを受けて、東電の西澤俊夫社長は会見でこう語った。これにより、6月末にも政府は東電に対して1兆円を出資すると同時に、同社の株式2分の1超を取得。60年以上続いた民間の明かりはついに消えることになる。
ここまでスンナリと来たわけではない。政府による出資が濃厚になってからも、出資額や議決権取得比率、新経営陣などをめぐって政府と東電が激しく対立。当初事業計画は3月末に提出される予定だったが、新体制のカギを握る次期会長がまったく決まらず、有力財界人の名前が浮かんでは消えた。
■(5月9日、下河辺・原子力損害賠償機構委員長(東電次期会長)と
面談する枝野経済産業相)
結局、東電を支援する政府の原子力損害賠償支援機構(機構)の下河辺和彦委員長が会長に就任することで決着。事業計画を提出できたのは連休直前だ。その一部始終がメディアで詳細に伝えられてきただけに、国民から見ると事業計画の承認は新味に欠ける感がある。が、日本有数の優良企業と目されてきた東電が、ついに政府の軍門に下ることが決まったことが大きな節目であることは間違いない。
今回、事業計画にはこのほか、金融機関からの新たな協力(現在の融資の借り換えや新規1兆円の融資枠設定)など東電に対する新規支援に加え、東電による10年間で3.3兆円のコスト削減策や、燃料・火力部門、送電部門、小売部門のカンパニー化といった合理化策も盛り込まれた。さらに、最大の肝と目されてきた、規制(家庭用)部門の値上げについても7月からキロワット時当たり2.40円、10.28%引き上げるほか、2013年4月から柏崎刈羽原子力発電所も順次、再稼働させる計画を打ち出した。