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「にわかには信じられなかった・・・」住民驚き あの"田園調布"の駅前にまで「民泊」! 行ってわかったリアルな実態

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  • 佐滝 剛弘 みらい観光文化リサーチベース代表 元・城西国際大学教授
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さらに、10月には完成した民泊施設を住民に公開する内覧会を実施している。筆者もこの内覧会を見学し、以上の経緯を地元の自治会長に教えていただいた。自治会では大田区に対しても、まるで民泊開業を地域住民に知らせたくないようにさえ思える不十分な周知方法などについて改善を申し入れるなどの活動を行っているという話も伺った。

民泊内覧会の案内(筆者撮影)

筆者は全国各地の民泊をめぐる住民の動きを逐一フォローしているわけではないが、田園調布の住民が今回行った民泊設置に対し自らの町の環境を守ろうとする果敢な取り組みは、全国的にも珍しい貴重な活動だと受け止めた。

民泊施設内のリビングスペース(筆者撮影)

なかでも筆者の心に響いたのは、やみくもに感情的に反対するのではなく、住民が納得できるようどう折り合いをつけるかを考え、行政や運営会社と粘り強く交渉を重ねた冷静な対応である。

そして民泊ができてしまう以上、地域と切り離された施設となるのではなく、主に外国人が想定されている宿泊者と地域住民が機会があれば交流できるような試みを考えることによって、民泊を迷惑施設ではなく、「共生装置」として捉えることも視野に入れた柔軟なまちづくりへの考え方である。

田園調布というブランドを守り続けた地域だからこそ、こうした対応が可能なのかもしれないという思いも新たにした。

「民泊」制限の動きが強まる

その一方、国内各地では「民泊」の見直しの動きが活発化している。大阪市と大阪府は、来年5月からの特区民泊の新規受付の停止を先ごろ発表した。

さらに、その大阪府の一自治体である寝屋川市では、今年8月、「騒音やごみ出しのトラブルが後を絶たず、規制を緩和してまで旅行者を受け入れるのは、住民の満足度向上を目指すまちづくりの方向性と異なる」として、特区民泊からの離脱を表明している。

また、東京・豊島区では、特区民泊ではなく民泊新法による民泊だが、これまでの「年間営業日180日、区内全域で営業可」という条件を来年12月から「120日間、区内の約7割で新設禁止」へと大きく制限に舵を切る。

大田区に今のところ表立った動きはないが、田園調布の地域住民が行政に注文をつけたように、行政の民泊の進め方にも課題が多い。そもそも閑静な住宅街で地域住民へのきちんとした説明もなくほぼ自由に民泊を開ける制度自体、欠陥があると思わざるをえない。

政府や地方自治体が「2030年に6000万人」などとインバウンドの受け入れに力を注ぐ一方で、住民の生活の場では様々な不安や軋轢が生じ、それに現場では対応しきれていない実態が浮かんでくる。

田園調布の例は、単に「非住民施設」を受け入れるかどうかという問題を超えて、まちづくりのありようやその主体は誰なのかという根源的な問いを投げかけているようにも思えてくる、そんな「民泊出現」であった。

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