その狙いは当たり、SNSには、大屋根リングや青空を背にしたワンハンド弁当の投稿があふれた。売れゆきも累計22万食と驚異的で、会期中、1個500~1700円のワンハンドBENTOシリーズが、単月売り上げ5000万円を突破。予想をはるかに上回る成功だった。
「のり弁の元祖」というプライド
しかし、万博という大ステージで、なぜのり弁だったのか? 実はほっかほっか亭は、「のり弁」の元祖を生み出した企業だからだ。
のり弁は昭和30年代、限られた食材しか手に入らない中で家庭に普及した「ねこまんま」(ごはんの上に醤油とかつおぶしをまぶして、海苔を乗せるごはん)のアイデアを生かし、創業者と、パートの女性たちから生まれたメニューである。
1976年の創業時に定番化して以来、「白身魚のフライ」「ちくわ磯辺揚」などの基本構成を守り続け、岡山県を除いた全国で不動の1位という人気を誇る。
価格も、米が高騰するなかで490円(岩手・青森・四国地方・淡路島を除く)を維持。白身魚にはふっくらとしたスケソウダラを使用し、時間をおいてもサクサク食感が続くようにパン粉を調整。磯辺揚げも磯の風味にこだわってつくられ、弾力のある食感で食べ応えがある。
のり弁のワンハンドBENTOは、そんな「元祖」のプライドと、「50周年を前に、のり弁開発者として、今一度存在感を出したい」という想いから作られたのだ。
万博は閉幕したが、ワンハンドBENTOを日常に落とし込んでほっかほっか亭で発売する計画や、別ブランドでの展開などの構想は継続中とのこと。のり弁についても既存の強みを再定義し、若者向けに再構築する試行錯誤が続けられている。
2つめの挑戦は、Z世代のカリスマを巻き込んだ新メニュー開発だ。相手は、TikTokとYouTubeの総フォロワー数が940万人を超えるYouTuberで料理研究家のリュウジ氏である。
リュウジ氏特製のピリ辛ツナマヨと目玉焼きが入った「のり弁当」や、オリジナルスパイスとレモン果汁でさっぱり食べられる「唐揚弁当」など、6種類の「バズベントウ」を2025年3月に発売したところ、発売初週で目標食数145%達成の大ヒットを記録。前年を大きく上回る新規顧客の獲得につながった。もちろん、その中心はZ世代だ。
特筆すべきは、その演出である。導入前に、「リュウジがSNSで『ほっかほっか亭がマズい』と酷評したことからほっかほっか亭に呼び出され、メニュー開発をすることになった」という流れが注目を集めていた。


















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