「日本に、こんな美しい心あります。なぜ西洋の真似をしますか?」 朝ドラ「ばけばけ」日本の急速な欧化政策にハーンが嘆いた訳

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「洋服を採用するとなれば、公家や諸侯だけでなく、全国の士族からも反対が出ることが予想される。したがって、洋服を採用するとは明記せず、論理的に『王政復古』の服制である古代官服を想定させながら、実質的には洋式制服になることを示していたのである」

では、そんな反発が予想されているにもかかわらず、このような見た目の改革に、明治政府は、なぜこだわったのだろうか。その理由は2つある。

一つは、版籍奉還と同様に、身分制度の解消のためである。江戸時代は、髪型も服装も身分で決められていた。そのため、洋服を定着させることで、外見から公家・諸侯・藩士・平民の区別ができないようにしようと、明治政府は図ったのである。

そして、もう一つが「鹿鳴館外交」の目的と同様に、欧米諸国に対して「日本は未開国ではなく、文明国である」とアピールしなければならなかったためだ。

尊王攘夷を掲げて倒幕したとはとても思えないほど、明治政府はとにかく欧米諸国の反応を気にしていた。欧米に認めてもらうためには、明らかに変化が分かる髪型や服装の改革が不可欠だった。

ハーンの目には奇異に映った日本の欧化政策

明治初期は没落士族の奮闘ぶりがクローズアップされがちだが、この頃は、誰しもがドラスティックな価値観の転換を迫られて、困惑を抱えていたといってよい。

だが、日本の伝統文化を愛するハーンには、無理してまで欧米化する日本人の姿が奇異に映ったようだ。ハーンは妻の小泉セツに対してこんな調子だったと、『思ひ出の記』‎には記されている。

「日本に、こんな美しい心あります。なぜ西洋の真似をしますか?」

朝ドラ「ばけばけ」は、身近であるがゆえになおざりにしがちな日本文化の価値を、改めて感じさせてくれるきっかけになりそうだ。

【参考文献】
小泉節子著、小泉八雲記念館監修『思ひ出の記』‎(ハーベスト出版)
小泉凡著『セツと八雲』(朝日新書)
NHK出版編『ドラマ人物伝 小泉八雲とセツ:「怪談」が結んだ運命のふたり』(NHK出版)
櫻庭由紀子著『ラフカディオハーンが愛した妻 小泉セツの生涯』(内外出版社)

真山 知幸 著述家

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まやま ともゆき / Tomoyuki Mayama

1979年、兵庫県生まれ。2002年、同志社大学法学部法律学科卒業。上京後、業界誌出版社の編集長を経て、2020年独立。偉人や歴史、名言などをテーマに執筆活動を行う。『ざんねんな偉人伝』シリーズ、『偉人名言迷言事典』など著作40冊以上。名古屋外国語大学現代国際学特殊講義(現・グローバルキャリア講義)、宮崎大学公開講座などでの講師活動やメディア出演も行う。最新刊は『大器晩成列伝 遅咲きの人生には共通点があった!』( ディスカヴァー・トゥエンティワン ) 、『ひょんな偉人ランキング ―たまげた日本史』(さくら舎)。「東洋経済オンラインアワード」で、2021年にニューウェーブ賞、2024年にロングランヒット賞受賞。
X: https://twitter.com/mayama3
公式ブログ: https://note.com/mayama3/

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