界隈の再開発について聞くと、
「まぁ、タワマンだらけになったら街の情緒が消えちゃうかもしれないわね。魚屋さん、八百屋さんなんかがいらっしゃいいらっしゃいって声かけて、店の前で立ち止まって近所の人とお話したりね。そういうのがなくなっちゃうかもね。うちはほら、こうやって自分から前に出て声かけてるから、にぎやかにしてるけど、今後はどうなるかね」(竹内さん)
タワマンと言えば、神奈川県川崎市の武蔵小杉が有名ですが、と話を向けると、
「武蔵小杉の人たちも自分の街をムサコって言うらしいけど、ほんとのムサコはこっち(武蔵小山)っていう意識はありますね(笑)。こっちのムサコもあちらみたいにタワマンだらけになったら、ちょっと寂しいかもしれない。とくにお年寄りの中には反対する人もいるみたいですね」(竹内さん)
そんな話をしている最中にも、客が押し寄せる。多い日では1日100個のジェラートが出るらしい。
「ムサコ(武蔵小山)は、武蔵小杉みたいにはならないくらいがいいのかもね。こっちのムサコとあっちのムサコの中間くらいのバランスで開発してくれるといいかな、と思っていますよ」(竹内さん)
関東に「武蔵」の付く地名が多い理由
武蔵小山に武蔵小杉、考えてみれば関東には「武蔵」とつく地名がやたらと多い。辞書で「武蔵」を調べると、【旧国名の一。東海道に属し、現在の東京都と埼玉県のほぼ全域に神奈川県の東部を含めた地域(大辞泉)】と説明されている。要するに関東は武蔵の国だから武蔵と付く地名が多いわけだ。
福岡県北九州市の田舎で育った私が初めて武蔵という地名に出会ったのは高校生の頃だった。北九州市の関門海峡を挟んでお隣、山口県長州藩の偉人、吉田松陰の辞世の句に見える。
身はたとひ武蔵の野辺に朽ちぬとも留め置かまし大和魂
松蔭は1859年(安政6年)に江戸の伝馬町牢屋敷で処刑されるのだが、その数日前に残した句とされる。その後、武蔵の野辺は開発され、今のような姿になった。そう言えば、日本一高いタワー、東京スカイツリーは634mだ。これもムサシ(634)の語呂合わせで設定された。武蔵の野辺にはこれからもしばらくは、タワマンが増え続けることだろう。


















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