それでも、再開発に対して反対はしていないそうだ。
「商店街を含め、このあたりの建物は老朽化が進んでいるから、スクラップ&ビルドの考え方は間違っていないと思います。この界隈は道路の拡張など、住みやすさ向上のための開発は以前から行われているんです。うちの常連さんのひとりに、道路拡張のために引っ越ししなきゃいけなかったお寿司屋さんがいらして、1年かけて新しい物件を探したんです。
わりと近くに物件が見つかって安心していたんだけど、移転前のようにお客さんが来てくれるかどうか、不安だったって言ってました。でも、蓋を開けてみたら元通りに繁盛しています。昔からのお客さんもみんな通ってくれている。そういうつながりのある街でもあるんです」(田辺さん)
空に向かって伸びるタワマンのふもとには、土地に根を張って生きる人たちがいるようだ。
「本当のムサコはこっち」
喫茶スールを出て、パルム商店街を歩いていると、一風変わったジェラート屋を見つけた。「学生服 タケヤ」の看板を掲げる店の軒先を使って営業している。
面白そうなので話を聞いてみたいのだが、客の列が絶えない。とりあえず列に並んで、ジェラートを買った。季節の果物や野菜を仕入れて、毎日手作りしているらしい。この日はヨーグルトとパンプキンのダブルサイズ(500円・税込)を選んだ。
客が途切れたところで、店主の竹内みどりさんにやっと話を聞くことができた。
「学生服のタケヤは私のおじいさんの代からやっている店なんですよ。正確なことはわからないけど、昭和の初期からやっているっていうから、100年くらいの歴史ですね。
この商店街には“王様といちご”っていう有名な喫茶店があるんですよ。あんなお店をやりたいと思って、この店とは別の店舗で、38年前にタケヤ・デザートインっていう喫茶店を始めたんです。今はそこを畳んで、ジェラート屋だけにしてます」(竹内さん)


















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