今回取材した武蔵小山のパルム商店街も同じだ。駅周辺地区の市街地再開発事業の目的について、開発連絡会は以下のように説明している。
「市街地内の老朽木造建築物が密集している地区等において、細分化された敷地を統合し、不燃化された共同建築物の建築、公園、広場、街路等の公共施設の整備等を行うことにより、都市における土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新を図る」
パルム商店街を歩いていると、たしかに老朽化した木造建築の商店が密集していることに気付かされる。
喫茶スールの場合
武蔵小山の再開発区域内で長く店を続ける「喫茶 スール(東京都品川区小山3-21-10)」の3代目、田辺麻未さんは次のように話す。
「1966年からここで店をやっているから、来年は60周年です。おばあちゃんの時代からのお客さんも多くて、まるで人間交差点みたいな店なんですよ。あと、最近は煙草が吸える店が減っているでしょ。うちはずっと喫煙OKなので、そういう面でも重宝されています」(田辺さん)
店は平日の昼間にもかかわらず、カウンター席は地元のビールを片手にした常連客で埋まっていた。情報通もいて、再開発の計画について聞くと、「ああ、ここは開発のど真ん中ですね。たしか40階くらいのタワマンが建つ予定だよ」と教えてくれた。
「竣工予定は6年後くらいだから、それまでにはこの店をどうするか決めないといけないんですよね。新しく建ったビルに入るか、別の店舗を探すか、店を閉じてしまうか。
でも、新しくできたビルに入るっていっても、家賃は今よりずっと高くなるだろうから、それを賄う自信はないし、場所を移るにしても、今のお客さんたちにはずっと来てもらいたいからあまり離れた場所はだめだし、とにかく悩んでいます」(田辺さん)


















無料会員登録はこちら
ログインはこちら