もはや"現場の対応"では立ち行かない…「カスハラ対策」と「クレーマー対策」の本質的な違いとは

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そうしたカスハラ対策本には、言葉づかいの巧みさや切り返しのうまさでカスハラを回避できると書かれていることが少なくありません。

たとえば、「相手の心を開かせるために共感する姿勢を示しましょう」「普段よりも声を低めにしてゆっくりと話しましょう」「正面から向き合うと緊張感が増すため、斜めの位置関係で接しましょう」といったコツが書かれてます。

カスハラ対策は「職場環境改善策」として行われるべき

『「度が過ぎたクレーム」から従業員を守る カスハラ対策の基本と実践』(日本実業出版社)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

確かに、そういったコツを身に付ければ、カスハラ対応が実際にうまくいくケースもあるかもしれません。

しかしながら、そういったコツが書かれたカスハラ対策本で対応がうまくいくのはごく一部の人だけです。

過去にはクレーマー対応も接客業務の一環でしたから、企業の責任者のなかには、クレーマーとの接し方のコツが書かれた書籍を読んで成功した人もいるかもしれませんが、誰もがそのようにうまく対応できるとは限りません。

人手不足が続く現状においては、持続可能な対応とは言えないでしょう。カスハラがハラスメントの一種である以上、一部の人のための対策とするのではなく、誰でも安心して対応できる職場環境を実現するための対策を講じるべきなのです。

このように、クレーマー対策は、「接客業務」の一環として行われていたのに対し、カスハラ対策は、「職場環境改善策」の一環として行われるべきで、そこに本質的な違いがあるのです。

クレーマー対策とカスハラ対策の本質的な違いを図で示すと、下の図のようになります。

(出所:『「度が過ぎたクレーム」から従業員を守る カスハラ対策の基本と実践』より)

※外部配信先では図表を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください

能勢 章 能勢総合法律事務所代表弁護士、「カスハラドットコム」運営者

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のせ あきら / Akira Nose

コンプライアンス系の法律事務所に所属した後、2012年に独立して能勢総合法律事務所を設立。「カスタマーハラスメント(カスハラ)」という言葉がない時代からBtoCの企業から多くの依頼を受け、お客様相談室や法務部では処理しきれない、度が過ぎたカスハラに対応に従事。カスハラは、現場の従業員の心を破壊することを痛感し、従業員の悩みに寄り添い、時には盾となることが自らの使命だと考え、積極的にカスハラ対応に取り組んでいる。昨今、カスハラ対策の必要性が叫ばれるなか、基本方針策定から現場での運用までの実務をカバーできる数少ない専門弁護士。

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