もはや"現場の対応"では立ち行かない…「カスハラ対策」と「クレーマー対策」の本質的な違いとは

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確かにクレーマーに誠実に接していれば、なかにはリピーターになる場合もあるかもしれません。しかしながら、クレーマー対応の過程で精神的な苦痛を感じ離職してしまう従業員もいたはずです。

かつては人手不足が現在ほど深刻ではなく、すぐに代わりの従業員を補充できたため、クレーマー対応に伴う弊害がそれほど問題視されなかったのかもしれません。現在の人手不足の状況では、それが通用するとはとうてい思えません。

また、「お客様は神様です」という言葉に代表されるように、かつては「行き過ぎた顧客至上主義」が根付いていた企業が多く、クレーマーに対して毅然とした態度を取ること自体が失礼だという考えもありました。

そのため、企業のなかには、クレーマーを排除することなく、ある程度要求を受け入れたり、必要のない謝罪をしたりして、「何とか解決してきた」、または「やり過ごしてきた」こともありました。

私は、弁護士として、カスハラという言葉もなく、まさにクレーマーと言われていた時代から「行き過ぎたクレーム」の対応に従事してきました。クレーマーからカスハラへと呼び方が変わるなかで、「行き過ぎたクレーム」に対する企業の姿勢や世の中の見方に変化が生じているのを感じてきました。

昔と現在とでは、行き過ぎたクレームの内容や特徴にそれほど違いがあるわけではありませんが、その本質は異なります。すなわち、クレーマーの本質は「要求」に、カスハラのそれは「嫌がらせ」にある点で大きく異なるのです。

過去においては、多くの企業が顧客至上主義とも言える姿勢で接客をしており、クレーマー対応もそういった姿勢で顧客の「要求」に応えるものとして行ってきたのです。

そのため、クレーマー対応は接客業務の一環であり、個々の従業員の接客能力のなかでうまく処理すべきものとされてきました。

カスハラは従業員に向けられた「嫌がらせ」

他方、カスハラは、従業員に向けられた「嫌がらせ」ですから、セクハラやパワハラと同列に評価されるべきものとされます。セクハラやパワハラと同様に、嫌がらせを受けた従業員の責任で生じるものではなく、迷惑行為を行う相手によって引き起こされるものです。

確かに、たとえば、従業員の言動が失礼であったなど、従業員のミスをきっかけにカスハラが生じることもあります。

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