彼女は20代でありながら、今の職場が4社目とのことでした。法人営業職の採用面接では、林さんは「またすぐに転職してしまうのでは」「そもそもなぜ、こんなに転々としたのだろう」などという疑問が湧いてきたのを覚えています。
ほかにもいくつか引っかかる点はありましたが、「もっと成長できる環境に身を置きたかった」というMさんのポジティブな転職理由を信じることにして、配属先の上司として採用に賛成しました。
Mさんは、入社当初から積極的に同僚との人間関係をつくっていました。
わからないことや困ったことがあるときは、遠慮することなく林さんや同僚に相談し、仕事に対して意欲的に取り組んでいるようでした。林さんはMさんの相談に乗って、かなり帰宅が遅くなることもありました。
しかし、もともと面倒見のいい性格で、「こういうことは林さんにしか相談できません」などと言われて頼ってこられると、悪い気はしなかったそうです。そして、次第に「自分がなんとかしてあげなければ」という気持ちになっていったということです。
「取引先の男性から言い寄られている」
林さんのチームは、基本的にメンバーのそれぞれに、担当する取引先を割り当てています。入社から2カ月ほど経った頃、Mさんにも1人で担当の取引先を持ってもらうことになりました。
それからしばらくは頑張っているようでしたが、2週間ほど経った頃、林さんは「取引先の男性担当者から、2人で飲みに行こうと誘われて困っています……」という相談をもちかけられました。
法人営業部門は接待も重要な仕事で、アルコールが入る会食があります。しかし、担当になってすぐにプライベートで飲みに行こうと誘われるというのは、Mさんの口ぶりからしても、常識的な仕事の範囲を超えている印象を受けました。
女性が取引先担当者の誘いを断れず、被害に巻き込まれる大きな事件もあったので、林さんは急いで対応する必要があると感じました。
そこで、Mさんには別の取引先を担当してもらうことにしましたが、1カ月ほどすると、またしても似たような相談を受けたのです。
今回の取引先の担当者は、林さんも以前からよく知っている人です。女性を執拗に誘うようなことはしないはずだと思ってMさんに担当してもらっただけに、再び同じような状況になったことを不思議に思いました。
また、この頃になるとMさんから林さんへの相談頻度が増えてきました。それでも林さんは、仕事帰りに一緒に夕食を食べながら彼女の悩みを聞いたり、深夜のLINEに返信したりと、上司として丁寧に対応していました。
しかし内心では、頼られすぎていることに難しさも感じていたということです。


















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