「うちはみんなSサイズ」…まるで"プロのモデル"のような先輩がいる職場で陥った摂食障害。この泥沼から抜け出すには?【事例で紹介】

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自社のブランドは、透明感がある肌を持った、まつ毛が長い海外のお人形のようなイメージがあります。Jさんから、そのイメージに近づけるような基礎化粧品やファンデーションなどを説明され、まつ毛はエクステかパーマをかけたほうがいいというアドバイスも受けました。

もちろん自社製品に関しては、多少の社員割引はあります。しかし、もともとハイブランドであるため、新人の給与でいくつも購入するのはキツかったそうです。

それでも、Jさんのアドバイスを無視するわけにはいかず、できる限り購入して、Jさんの機嫌を損ねないようにしていました。

ロッカールームは、美容部員の休憩場所も兼ねていたため、岡野さんはJさんと一緒にいると、また何か勧められると思って、その頃には次第に気が重くなっていたようです。

体型への不安から「ダイエット」

そして、なにより岡野さんが避けたい話題が体型の話でした。

周りの同僚は、いつも「少し太ったかも」「昨日、食べ過ぎちゃった」などと体型の悩みを話していますが、岡野さんから見れば、みんな彼女よりも痩せていて、SSサイズやSサイズの制服を余裕で着用できています。

そのため岡野さんは、Sサイズの制服がキツイことを誰にも相談できず、ダイエットするしかないと思いました。

岡野さんのダイエット方法は、とにかく炭水化物を摂らないことでした。朝食抜き、昼はバナナ1本、夜は野菜サラダというメニューを2カ月続けたところ、体重が5キロ近く減り、Sサイズの制服も着られるようになったそうです。

ダイエットに成功してやせた岡野さんは、Jさんや同僚から「最近、やせてキレイになったね」などとほめられることが多くなりました。うれしくなった彼女は、さらに厳しい食事制限を加え続けていったようです。

しかし、ダイエット開始から4カ月が過ぎた頃、エネルギー不足を感じ、体力的に仕事がきつくなってきました。そして、ストレスや今までの反動から“とにかく食べたい”という衝動に駆られるようになり、コンビニの揚げ物やカップラーメン、菓子パン、チョコレートなどを一気に食べるという過食行為をするようになりました。

たくさん食べた後は、「ニキビができてしまう」とか「太ったら自分だけ制服のサイズがMになってしまう」という“恐怖感”と食べることを止められない“罪悪感”にさいなまれ、意図的に嘔吐(おうと)したり下剤を使ったりするようになりました。

大量に食べた後などは、意図的な嘔吐や下剤使用を1日3回以上の頻度で行ったため、体重はさらに減少して不健康な体型になり、体力や判断力がみるみる下がっていくのが自分でもわかったそうです。

健康状態の悪化から、見るからに肌艶(はだつや)がなくなり、それまで以上にJさんから自社ブランドの購入を勧められました。しかし、金銭的に余裕がなく、すでに購入は難しくなっていました。

岡野さんは、次第に朝も起きられなくなり、遅刻や欠勤が続き、仕事上のミスが増えて自信も喪失し、抑うつ状態に陥っていくという悪循環に陥っていたようです。

上司が岡野さんのそんな状態に気づき、筆者は上司(会社)を通して、岡野さんと面談をすることになりました。

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