(第45回)中国乗用車市場の激烈な価格競争

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低価格車が伸びる背景には、中国の乗用車購入者の変化がある。00年代前半までは、政府高官や企業経営者などの高所得層が購入するか、タクシー用だった。しかし、それ以降、ホワイトカラーも乗用車を購入するようになった。

外資系メーカーが中国市場で生き延びるためには、コスト面で中国民族系メーカーと競争しつつ、低価格車を生産しなければならない。そのためには、製造コストの7割程度を占める部品コストの削減が重要だ。

本国で生産した部品を使っていては、それは実現できない。だから、現地部品への切り替えや、現地サプライヤーの開拓が必要になる。日本のメーカーもそうした対応を余儀なくされる。日本から中国への輸出では、完成車に比べて部品のウエートが高かったが、そうした状態を今後も続けるのは難しいわけだ。

中国自動車市場では、どのメーカーも安定的な地位を築けず、順位の変転が著しい。今後も変わるだろう。中国政府の方針が転換することもある。4月3日付の『サンケイビジネスアイ』は、「自動車産業界の過剰生産を抑制することを目的に、中国政府はこれまでの外資誘致政策から一転して、外資系企業の投資に関する規制策を推進する」と伝えた。

中国の経済成長で、「夢の巨大市場がついに開けた」と世界中の大企業が思った。新製品を渇望し、これからも着実に購買力を増大させていく膨大な数の新中間層が登場しつつあることは事実だ。が、そこで待ち受けていたのは、過酷な価格競争でもあった。これまで、フォルクスワーゲンもGMも苦い経験をした。この状況は今後も続くだろう。

野口悠紀雄(のぐち・ゆきお)
早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授■1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省(現財務省)入省。72年米イェール大学経済学博士号取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授などを経て、2005年4月より現職。専攻はファイナンス理論、日本経済論。著書は『金融危機の本質は何か』、『「超」整理法』、『1940体制』など多数。(写真:尾形文繁)

(週刊東洋経済2012年4月28日・5月5日合併特大号)
記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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