しかし、以下に見るように、それとは異なる事態が起こっているのである。国有企業の生産性が向上せず、その反面で、政府と関係がない独立の民族系メーカーの躍進が目覚ましいのだ。自動車部品、オートバイ、家電などからの参入が続いており、完成車メーカーだけで120社以上が乱立する状態になっている。部品メーカーは2000を超える。
この結果、市場の集中度は低い。アメリカと日本では、上位3社が50%以上の市場シェアを占める寡占状態だが、中国では上位3社のシェアは20%をわずかに超えるにすぎない。大国有企業の寡占状態が続かず、新メーカーが成長しているのは、興味深い現象だ。
独立民族系メーカーの成長が目覚ましい
民族系メーカーのなかでとくに注目すべきなのは、奇瑞汽車(Chery Automobile)と吉利汽車(Geely Automobile)である。吉利は86年に冷蔵庫の製造企業として設立された。92年にバイクの製造を開始し、97年に自動車の生産を始めた。農民から身を起こして同社を立ち上げた李書福は、「中国の本田宗一郎」ともいわれる。奇瑞は地方政府が所有する企業だが、中央政府所有の企業とは性格が大きく異なる。自動車生産を始めたのは、2000年にすぎない。
両社ともそれまで自動車生産の経験がまったくなく、品質劣悪と批判されながら成長し、いまや国際市場で戦える力をつけた。奇瑞汽車の11年の販売量は約64万台。そのうち輸出が約16万台で、9年連続して全国の輸出トップを占めた。奇瑞汽車は世界で16カ所の生産拠点を持っており、販売先は80カ国・地域を超えている。ロンドンのタクシーは、中国の吉利汽車と上海華普汽車が製造することとなっている。吉利はスウェーデンのボルボを傘下におさめた。