中国における自動車事業に関して、多くの人が誤解、あるいはイルージョンに陥っている。
こうしたイルージョンが生じるのには、理由がある。過去において実際そうしたイルージョンを支持する事実があったからだ。しかし、中国の市場は急速に変化しつつある。数年前の成功例さえ、もう役に立たない。それにもかかわらず、いまだに過去の成功事例に囚われて事業展開を考えている企業が多いのではないかと考えられる。
これは自動車に限ったことでなく、さまざまな分野の事業について言えることだ。したがって、自動車の場合のケーススタディは、他の事業を中国で展開する際にも有益な情報となるだろう。
第1のイルージョンは、「中国における自動車の製造販売事業は、参入が規制されているので、利益が確保できる」というものだ。
外資の参入が規制されているのは、事実である。外資が中国における自動車事業を行おうとすれば、中国企業との合弁でなければならないからだ。これは、参入にまったく規制がなく、そのため激烈な競争が展開されているエレクトロニクス産業とは非常に違う状況だ。
だから、「エレクトロニクス産業に見られるような価格破壊はないだろう」と考えられても不思議はない。さらに、「中国では政府の権限が強いから、中国政府と良好な関係を築ければ、その保護下で独占的な地位を享受できる」と考えられるかもしれない。
ある時点まで、中国の自動車産業は確かにこのような状態だったのである。