「威嚇するしぐさも、かわいいなぁって思いました。小さな腕をいっぱいに広げて、『ジー!』って鳴くんです」

フクモモは臆病な生き物だ。簡単にはなつかないことも、ひろさんは理解していた。そしてその方が「フクモモらしくてかわいい」と思ったのだという。
ジゲン君は2カ月かけて環境に慣れ、そしてひろさんの存在に慣れていった。最初のころは広い部屋であちこち逃げてしまわないよう、蚊帳を張ってその中で部屋んぽをさせた。こうすることでフクモモを部屋の中で見失うこともなく、飼い主と一対一で遊ぶこともできる。

無理に距離を詰めることもせず、ひろさんはゆっくりとジゲン君のタイミングを待った。ジゲン君が自ら近づいて来てくれたのは、3カ月経った頃だった。
「手のひらに乗ってくれて、おやつを食べてくれた瞬間が、一番感動しました」
今でも「ベタ馴れ」という程ではない。ひろさんとジゲン君は、お互いに心地よい距離を保ち、お互いを必要としながら暮らしている。

ジゲン君にも、パートナーを……
ジゲン君を迎えたのち、ひろさんの人生にもう一つ「幸せ」が訪れた。人間のパートナー、もえさんとの出会いだ。ジゲン君の臭い問題も、「慣れれば平気!」と笑い飛ばし、糞尿対策に「フクモモ専用服」に着替えて部屋んぽの相手をしてくれる、前向きで朗らかな女性。
もえさんは、ひろさんの部屋をもう一段明るくしてくれる存在となり、二人は結婚を考え始める。しかし、ひろさんにはひとつ気になることがあった。
「僕はもえと出会って結婚を考え始めているのに、ジゲンは……」
自分だけ幸せになっていいのか。フクモモは本来群れで生きる生き物だ。彼にも生涯の伴侶が必要ではないのか。
後編『「自分だけ幸せになっていいのか」フクロモモンガを飼い溺愛する男性が“自分の結婚”を機に“ペットの婚活”を決意。“ケンカばかり”に見えた2匹の意外な結末とは?』では、ジゲンのパートナー探しとその結末を紹介する。
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