「でも、ずっと一緒にいるとわからなくなっちゃうんです」と、ひろさんは言う。においはオスの方が強く、もえさん曰く「アクリル絵の具のような獣臭」。ちなみに排泄のしつけはできない。気になるかどうかは、フクモモ愛の強さによるのかもしれない。
そして、フクロモモンガの醍醐味といえば、「滑空」だ。部屋んぽの際は存分に飛ぶ姿を眺められるだろう。期待を込めて尋ねると、もえさんがクスクスと笑い出した。
「私も最初はそう思ったんです。だから初めて見たとき、びっくりして。『飛ぶってこういうことなの?』って」
実際は、通常よりもゆっくり着地するという程度らしいので、空を華麗に舞う姿を期待するとがっかりするかもしれない。

飼育にかかる費用は、ペレットと呼ばれるフクモモ専用のエサ代、1匹なら月に1500円程度で済む。しかしこれがなかなかそうはいかない。
「エサやりは一番大変です。飽きっぽくて、ひとつの種類のエサを食べ続けてくれなくて。飽きさせないよう、体調に合わせて与えるフードの種類も変えなければなりません」
ひろさんはそう言うが、隣からもえさんが、「でも彼は、フードの比較分析が趣味みたいなものだから」と教えてくれた。
実際に雑食で飽きっぽい個体は多いので、何種類かのペレットを買って、ローテーションで与えた方がよさそうだ。

飼い始めても数カ月は「威嚇」。簡単ではないフクモモ飼育
朝起きて、まだジゲン君が眠っている時間にケージを掃除し、ペレットと水をセットして仕事に向かう。残業を終えて帰る場所は、もう暗く静かな部屋ではない。扉を開けると、がさごそと何かが動く音がする。ケージの中からは、寝起きのジゲン君の大きな目が覗いている。
しかし、飼い始めてから数カ月、ジゲン君はひろさんに全くなつかなかった。共に生きる相棒が欲しかったのに、触れ合うどころか目があえば威嚇されてばかり。それでも手を出せば噛みつかれる始末。しかし……。
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