では、どうすればいいのか。まず、部下を3つのタイプで観察することから始めよう。
この部下は自分から動くタイプか。きっかけがあれば動くタイプか。それとも、なかなか動かないタイプか。(※『わかりやすさよりも大切な話し方』には、さらに詳しく7タイプに分解して解説している。ぜひ参考にしてもらいたい)
次に、タイプに合わせて声のかけ方を変える。
自分から動くタイプには、権限を与えて任せる。きっかけが必要なタイプには、小さな成功体験を積ませる。動かないタイプには、まず信頼関係を築く。そして、個別の1on1ミーティングを重ね、対話を大切にする。全体会議での指示ではなく、一人ひとりと向き合う時間を作る。その人の強みは何か、課題は何か、どう成長したいのか。じっくり聞く。
これらは一見面倒に見える。しかし、この「面倒」こそが、AIには真似できない人間の価値なのだ。
空気を変える力も人間だけのスキル
もうひとつ、AIにはできないことがある。それは「組織の空気を変える」ことだ。
私の経験で興味深い事例がある。ある企業で社内チャットツールの導入に抵抗する社員がいた。どんなに説得しても「メールで十分」と動かない。
ところがその社員が転職した先では、初日からチャットツールを使っていた。なぜか。新しい職場では「それが当たり前」だったからだ。人は論理では動かない。しかし空気が変われば態度を変える。主体的に行動を起こすのだ。
この「空気を変える」のも、上司の重要な仕事だ。チームの雰囲気を作り、文化を醸成し、みんなが自然と動きたくなる環境を整える。
AIが仮にチームの空気を一定程度分析できたとしても、人を巻き込んで変えるほどの推進力は持ちえない。だからこそ、部下育成と組織づくりができる上司の価値は、今後ますます高まる。
部下育成を「面倒な仕事」と捉えている上司は、自らの市場価値を捨てているに等しい。AIが進化すればするほど、人間にしかできない仕事の価値は高まる。その最たるものが人を育てるスキルだ。今こそ、一人ひとりに向き合い、その人に合った育成方法を見つける時である。
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