答えは「ノー」だ。
少なくとも現状のAI技術では、完全に代替することが極めて困難な仕事がある。その一つが「人を育てる」ことだ。
なぜ部下育成はAIにできないのか?
部下育成の本質とは何だろう? それは一人ひとりの特性を見極め、その人に合った方法で行動変容を促し、成果を出させることだ。
新刊『わかりやすさよりも大切な話し方』で詳しく解説しているが、人間は大きく3つのタイプに分けられる。
まず「自燃人」だ。自ら火がつくタイプで、新しい提案に「やります!」と即答する。全体の1割程度しかいない希少な存在である。
次に「可燃人」。火をつければ燃えるタイプで、全体の7〜8割を占める。きっかけさえあれば動くが、最初の一歩に時間がかかる。
最後に「不燃人」だ。何をしても火がつきにくいタイプで、論理でも感情でも動かない。全体の1〜2割程度存在する。
ここで重要なのは、同じ言葉でも人によって反応がまったく違うこと。たとえば新しいプロジェクトを提案したとする。自燃人は「面白そう!」とすぐ飛びつくだろう。しかし可燃人は「みんなもやるなら」と様子を見る。不燃人は「今のままで問題ない」と抵抗する。
今のAIにこの判断ができるだろうか?
部下の表情、声のトーン、その日の体調、過去の失敗経験、家庭の事情。これらを総合的に判断して、今日はどのアプローチが最適か決める。このような複雑で繊細な判断こそ、人間にしかできない仕事なのだ。
たとえ言葉にしなくても、次のようなことは現実に起こっている。
「上司から言われても、なぜか行動を変えられないけど、なぜか他部署のC課長から指摘されると、ついつい行動を変えてしまう……」
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