薬が投与されると愛猫はストンと息を引き取った…安楽死は家族みんなで決めた「でも寂しいよ」

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その日の夕方、家族全員でまるを連れて動物病院へ向かい、処置室で最後の「お別れの時間」を迎えた。獣医師から「心臓を止める薬を入れたら、1秒もかからず意識がなくなります」と告げられた。

最後に女性がまるを抱きしめた。薬が投与されると、まるはストンと息を引き取った。3歳になったばかりだった。女性はまるの体を抱き、涙が止まらなかった。家族も、みな泣いた。

安楽死は「人間のエゴ」の声も

犬や猫の安楽死について、「苦しそうだから安楽死させるのは人間のエゴ」という声もある。

日本では、動物に安楽死を施すよりも自然な最期を迎えさせたいと考える傾向も強い。獣医師が年間に行う安楽死の件数は欧米と比べて圧倒的に少ないとされ、依然として「治療の選択肢」としては広く定着していない。

しかし、女性は安楽死を選択したことに後悔していない。延命はもはや不可能で、苦痛を和らげる以外の選択肢はなかったからだ。

ただ、言いようのない喪失感に襲われた。まるを亡くして数カ月は、誰もいない家でよく「まるがいなくて寂しいよー」と大泣きした。女性は言う。

「猫ですけど、本当の子どもみたいな存在でした。息子を失ったみたいな気持ちです」

まるの心臓は、今後のペット医療や疾患の研究に役立ててもらうため、大学病院に検体として提供した。

まるには、もう会うことはできない。せめて夢で会いたいと思うが、一度も出てきてくれたことはない。夜、寝る前に、心の中で願いをかける。

「まる、夢に出てきて」

(AERA編集部・野村昌二)

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