野球の試合があるのは年間たった71試合なのに…「北海道・エスコンフィールド」が人でいっぱいなのはなぜ? 「驚異の集客力」に隠された緻密な設計

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差別化できるのは「野球」「ファイターズ」あってこそ 集客施設としての「ボールパーク」の凄み 

大谷翔平選手・ダルビッシュ有選手の壁画
大谷翔平選手・ダルビッシュ有選手の壁画(筆者撮影)

こうして、エスコンフィールドやボールパークは、試合があってもなくても足しげく通うリピーターを獲得している。しかし周りを観察する限り、「野球」「ファイターズ」というテーマだけは、変えようとしていない。これが、新たなファン獲得に繋がっているようだ。

野球を観ない人でも、ダルビッシュ有選手(現:サンディエゴ・パドレス)、大谷翔平選手(現:ロサンゼルス・ドジャース)などの元・ファイターズ戦士の名前を聞いたことがあるだろう。いまはアメリカ・メジャーリーグで活躍する2選手の壁画の前では、記念撮影を行う人々の影が絶えない。

そのまま1塁側に進み、過去に優勝・日本一を達成した際の記念ペナントや、1973年に日本ハムが前身球団(日拓ホームフライヤーズ)を買収した当時からの、球団の歴史を学べる。

球場内の通路では、実況席に歩いて向かう糸井嘉男氏・杉谷拳士氏などの元・一流プレイヤーを見かけたり、ファンなら気づくであろう元・選手の球団職員の方を見かけたり。中には、新垣勇人投手(2018年引退)が普通にその辺でホットドックを売っていたりする。

スタジアムツアー
スタジアムツアーなら、ファイターズガールとともに関係者専用エリアを見学できる(筆者撮影)
1塁側ベンチ
ファイターズが通常使用する1塁側ベンチ。手前側は新庄剛志監督のための椅子(筆者撮影)

そこまで野球を知らない方でも、濃密なファンが行き交う空間で体験を共有し、スタジアムという非日常を味わえば、「ファイターズってそんなにスゴイの?」「もっと知りたい!」と気になるような人も出てくる。そうなると、2回目の来場は野球目的で、いつしか選手タオルを振り回して応援歌を歌うようなファンに深化することもあるだろう。

球団が選手を育てるのは当然のこと。くわえて、”ハコモノ”である球場を集客施設化することでライトなファンを生み、その中から熱心なファンが育つ。“好き”“推し”とともにあるファンマーケティングの手法として、エスコンフィールドは極めて優秀なビジネスモデルではないだろうか? 自慢のグルメとクラフトビール・梅サワーで出来上がりつつ、そう感じた。

青々とした芝生やスタジアム
青々とした芝生やスタジアムは、非日常そのものだ(筆者撮影)

ただ、ここまで大掛かりなボールパークを建設するのに、日本ハムグループは600億円という費用を投じている。さらに、2022年までファイターズ本拠地を置いていた札幌ドームを出て、人口200万人近い札幌市から郊外の北広島市に移転するという行為は、ビジネスとしてリスキーと言わざるを得ない。

後編記事「札幌ドームと大違い「エスコン」しっかり儲かる訳」では、2023年に開業したエスコンフィールドが、どう経営を成立させているかを追ってみよう。日本ハム流・ファイターズ流の経営スタイルは、どこにでもあるようで、意外とない。

宮武 和多哉 ライター

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みやたけ わたや / Wataya Miyatake

バス・鉄道・クルマ・駅そば・高速道路・都市計画・MaaSなど、「動いて乗れるモノ、ヒトが動く場所」を多岐にわたって追うライター。政令指定都市20市・中核市62市の“朝渋滞・ラッシュアワー”体験など、現地に足を運んで体験してから書く。3世代・8人家族で、高齢化とともに生じる交通問題・介護にリアルに対処中。著書「全国“オンリーワン”路線バスの旅(既刊2巻・イカロス出版)など

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