大怪我で20日間意識不明の事態に追い込まれた私が、「死後の4つの可能性」を古典に学んでみたら、人生で大切なことが見えてきた

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
永劫回帰では「人生」と「瞬間」の長さが逆転する。
人間にとって、人生100年は長い時間だけれど、瞬間はとても短い時間だ。
だから人びとは、「瞬間」を消耗しながら生きていく。瞬間の大切さに気づかないまま、未来の目標だけを見ながら走っていくのだ。(372ページより)

ニーチェは永劫回帰という考え方を通じ、本当に大事なのは未来の不確かな約束ではなく、「いまこの瞬間」だということを伝えようとしたのだ。

「いまこの瞬間」を幸せにしなければいけない

永劫回帰によると、この瞬間は、無限にくり返される人生のなかで何度もまた訪れるのだという。そして瞬間の長さは、人生をくり返すたびに長くなっていき、結果的に無限になる。仮にそれが真実であれば、私たちは死後、いまの人生と同じ人生をふたたび送ることになる。

正直なところ実感しづらいが、ただし以下の主張には強く共感できる。

それに比べると人生100年はあっという間だ。こうして、「瞬間」と「人生」の長さが逆転する。人生は限られた短い時間にすぎないけれど、瞬間は結局、無限になるのだ。
もしいまこの瞬間が苦しいなら、この苦しみは永遠に続くことになる。いまこの瞬間が幸せなら、この幸せも永遠につづくことになる。
ニーチェは、僕たちに賢明な選択を求める。
僕たちが消耗しているこの瞬間は、永遠にくり返される。だからムダにしてはいけない。
これからくり返される自分の人生をつくっていかなければならない。
いまの自分にできるいちばん偉大なことを成し遂げないといけない。
(373〜374ページより)

またまた自分の話で恐縮だが、半年ほど前に転倒して怪我をした。重傷との診断を受けて集中治療室に入れられたため慌てたものだ。慌てる余裕があったのが幸いで、結果的には無事に回復したのだが、なにかの歯車が少しでもずれていたら死んでいた可能性も充分に考えられた。9歳のときに次いで、ふたたび生死の境をさまよったとも解釈できるかもしれない。

そんなことがあったからこそ、この主張には強く共感できるのである。しかし、それは私だけに限った話ではなく、この世界を生きるすべての人にあてはまることだとも言えるはずだ。

印南 敦史 作家、書評家

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

いんなみ あつし / Atsushi Innami

1962年生まれ。東京都出身。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。「ライフハッカー・ジャパン」「ニューズウィーク日本版」「サライ.jp」「文春オンライン」などで連載を持つほか、「Pen」など紙媒体にも寄稿。『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(PHP文庫)、『いま自分に必要なビジネススキルが1テーマ3冊で身につく本』(日本実業出版社)『「書くのが苦手」な人のための文章術』(PHP研究所)、『先延ばしをなくす朝の習慣』(秀和システム)など著作多数。最新刊は『抗う練習』(フォレスト出版)。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事