独居老人が団地で閉じ込められ事件簿、住民が一致団結で救出大作戦!「どの部屋にどんな人が住んでいる?」知っていたから命が救われた
私「夜分にスミマセン! 母がダイニングに閉じ込められました。大工のA君に来てもらったけど、道具がなくて困っています。マイナスドライバーはありませんか?」
Yさん「大きいのと小さいのとあるで、どっちや?」
A君「……どっちも」
午後8時ごろ、ドアラッチが戻った!
実家に戻って弟の妻に尋ねると、24時間駆けつけサービス(仮称)が来るのは「夜の10時~11時」とのこと。「そんなに遅いのか……」という落胆の色が全員の顔に広がりました。
夜の10時では閉じ込められてから5時間以上たってしまうことになります。高齢の母に万が一のことがあっても困る。できれば、それより早く助け出せないか、まずはA君の意見を聞きました。そこへYさんも加わって、アドバイスしてくれます。
しかし、実際に作業を始めてみると、なにしろ道具が十分でありませんし、A君やYさんが予想していたよりドアラッチは手ごわく、元に戻る気配がまったくありません。
A君「おかしいなぁ……普通やったらこれで外れるとこやのに。全然戻れへん」
弟の妻「いっそのこと、バールで壊してください!」
物件所有者の妻から大胆な提案がなされましたが、マイナスドライバーもない家にバールがあるはずもありません。またプロのA君は自分が壊した後、他の誰かが修理・交換・補修などの作業をすることまで先回りして予想し、「壊しすぎてもいけない」と肝に銘じているようでした。
A君が格闘している間、母は扉のすぐ向こうに。ドアガラスに張り付くようにして成り行きを見守っている老いた母の不安そうな影が見えています。
30分くらいたったころでしょうか。意を決したA君はYさんから借りた大小2本のドライバーをノミのように使ってドア枠を彫り始めました。
A君「あかん。ハンマーも必要や」
Yさん「あるで。持ってこよか」
A君「俺が合図したら引っ張って」
私「分かった」
仕上げは私も加勢して斜め上方向にドア枠を押し上げます。
ガチャン!
ドア枠と扉をつないでいたドアラッチの金具一式が下に落ちる音がしました。それまでの膠着(こうちゃく)状態がうそのように軽くふわっと扉が開き、母が転がるように出てきます。
事件の解決はあっけなく、少しの気まずさが漂っています。普段なら集うはずのない面々が狭い廊下に密集しているのですから、それも当然でしょう。
母の無事を見てとると、A君は削られたドア枠を私に示しながら小さな声でこうつぶやきました。