ホークスとスワローズ、親会社の意外な評価 その株価はいったい何を示しているのか

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次にキャッシュフローと有利子負債を見てみよう。キャッシュフローとは一定期間に流出入するおカネの流れを示す。決算短信や有価証券報告書にキャッシュフロー計算書が記載されている。このうち「『営業活動によるキャッシュフロー』は事業活動を通じて実際に稼いだおカネ。『投資活動によるキャッシュフロー』は設備投資、有価証券投資、企業買収等に伴うおカネの流出。『財務活動によるキャッシュフロー』は、借金(返済)、増資(配当金支払い)に伴うおカネの流出入をいう」(日本証券業協会HP)。

キャッシュフローはどうか?

ヤクルトとソフトバンクの2015年3月期のキャッシュフローを見てみよう。

  ヤクルト        ソフトバンク
■営業キャッシュフロー
554億0700万円     1兆1551億7400万円
■投資キャッシュフロー
▲500億6600万円   ▲1兆6672億7100万円
■財務キャッシュフロー
▲16億3400万円     1兆7199億2300万円
(▲はマイナス)

 

ヤクルトは、営業キャッシュフローの範囲内に投資キャッシュフローを抑えるという、教科書どおりともいえるバランスのとれた経営を行っている。その結果、財務キャッシュフローは小動きである。

これに対し、ソフトバンクは営業キャッシュフローも確かに大きいが、営業キャッシュフローの範囲を大きく超える投資を行っている。その結果不足するキャッシュを財務キャッシュフロー、すなわち、借り入れや社債発行で補っている構図だ。両社の傾向は単年度の話ではなく、多年度にわたり、ほぼ同じ傾向となっている。

その結果、ヤクルトは財務の健全性を示す指標のひとつである「自己資本比率」で50%以上の水準を保っているが、ソフトバンクの自己資本比率は2014年3月期以降、10%台まで低下している。

次に、会社が負っている負債のうち、利息(利子)を付けて返済しなければならない「有利子負債」の額を比べよう。ヤクルトは1000億円程度であるが、ソフトバンクの有利子負債はすでに10兆円を超えている。

このように、事業の安定性や予測性という面で考えると、ソフトバンクの株価がPER10倍台にとどまる一方、もともとディフェンシブ銘柄として買われやすい食品メーカーの中でも財務の健全性が高く、ブランド力も高いヤクルトは、株式市場で相対的に高く評価されている、ということに一定の説明がつきそうだ。

話をプロ野球に戻そう。昨年のオフでソフトバンクが補強の目玉としてMLBのメッツから年棒4億円の4年契約プラス出来高という破格の条件で獲得した松坂大輔投手が、ケガのため結果的に今シーズンは戦力にならなかった。積極的な大型投資がいつもうまくいかず、成果が出るまでに場合によって時間がかかるのは、会社経営も球団経営も同じといえるだろう。

榊 裕葵 社会保険労務士、CFP

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さかき ゆうき / Yuki Sakaki

東京都立大学法学部卒業後、上場企業の海外事業室、経営企画室に約8年間勤務。独立後、ポライト社会保険労務士法人を設立し、マネージング・パートナーに就任。会社員時代の経験も生かしながら、経営分析に強い社労士として顧問先の支援や執筆活動に従事している。

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