部屋で自分より賢い人間がいない状態にならないことを常に目指すべきだ、そうすれば学ぶことができるから、と誰かが言うのをあなたは聞いたことがあるだろうか?
独裁者の状況は、これとは正反対だ。へつらうだけの無能な人間ばかり周りに置くと危険は低くなるが、独裁者は自らそういう状況を作り出すことで、どの部屋にいても自分が最も賢い人間になってしまう。
へつらう人間たちは、独裁者が聞きたいことばかり告げる可能性が高い。なぜなら独裁者は時がたつうちに、不快な真実を告げる人を粛清していき、噓をついて喜ばせようとする人ばかりに報いてしまうからだ。
この結果、独裁者は自ら仕掛けた罠(わな)にはまる。独裁者は、自分の人選によって現実の見方がしだいに歪(ゆが)むにつれ、現実とは掛け離れた認識に基づいて、壊滅的なミスを犯しやすくなる。
これには、構造的な要素も絡んできうる。最大の優先事項が(国民全体ではなく政権にとっての)安全ならば、独裁者は1日の大部分を、諜報員や軍人や警察関係者といった、その世界に生きる人々に囲まれて過ごすだろう。
そして、それらの人々は、1日中さまざまな脅威について考えるように訓練され、給料を受け取っている。
プーチンの思考を歪ませた「シロヴィキ」
たとえば、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領を見てみると、明確な軌跡が浮かび上がる。
彼は当初、経済の健全性を真剣に考える技術官僚を周囲に置いた。彼らは、大統領に助言を与えるようになる前は、銀行家や経営者などだった。
やがて、このグループの影響力が弱まる一方、「シロヴィキ」が影響力を強めた。シロヴィキというのは、治安や諜報や国防の関係機関の出身者のことをいう。
たとえば、ロシアの対外諜報機関の長官セルゲイ・ナルイシキンや、悪名高いソ連国家保安委員会(KGB)の後継機関の1つを統括するアレクサンドル・ボルトニコフがそうだ。
ナルイシキンとボルトニコフの世界観は、それぞれの職業の影響を受けている。あらゆる人や物事が潜在的な脅威である闇の世界で何十年も過ごした彼らの思考法は、彼らの言葉に耳を傾けるプーチンにも影響を与える。


















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