資本の〈謎〉 世界金融恐慌と21世紀資本主義 デヴィッド・ハーヴェイ著/森田成也、大屋定晴、中村好孝、新井田智幸訳 ~理論的かつ具体的に世界金融恐慌を解明
これまで世界金融恐慌についての経済学者たちの議論は抽象的で、具体性が欠けたものが多いが、この著者の議論は具体的で、事実に即しており、説得力がある。
ただ、「資本の謎」を解いていくためには、現実に資本の担い手になっている巨大株式会社にメスを入れる必要があるのではないか。著者はそれを資本家と言っているが、21世紀の現在、少なくとも米国や欧州、日本では、それは個人資本家ではなく、巨大株式会社の経営者である。
評者は原書が出たときすぐにこの本を読み、深い感銘を受けたが、その後、2011年に出たペーパーバック版に著者が書き加えた「あとがき」はその後の動きを詳しく書いており、興味深く読ませた。
世界金融恐慌についてたくさんの本が出ているが、理論的かつ具体的という点でこの本は類書にない特色を持っている。
David Harvey
米ニューヨーク市立大学教授、専攻は経済地理学。米ジョンズ・ホプキンス大学、英オックスフォード大学、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスなどを経る。このほかの邦訳書に『〈資本論〉入門』『新自由主義』『ネオリベラリズムとは何か』『パリ』など。
作品社 2625円 387ページ
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