「IR推進とオンラインカジノ摘発の二重基準 」有名人逮捕で問われる、日本のギャンブル政策の矛盾

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

しかし、その性格を弱めるための「出玉規制」なども行われている。出玉規制とは、一度に大量の景品を獲得できないようにするための法的・技術的制限のことだ。依存症対策や射幸心(ギャンブル的興奮)を抑える目的で実施されてきている。また、社会的・経済的に大きな産業(数兆円規模)として容認されている実態がある。

合法か違法かの線引きは難しい

何が違法な賭博(ギャンブル)にあたるのかの線引きも難しい。少額(100円~数百円程度)の場合は、「一時の娯楽に供する物」として社会通念上許容範囲とされることがあるし、家庭や友人間の私的空間での遊びとしての行為は軽微とみなされる。

また、金銭ではなく物品(ジュース等)を賭けた場合も賭博の「財物」に該当しない可能性ある。しかし、注意したいのは、これらは明確に違法ではないという意味ではなく、軽微なものとして見逃されやすいだけと考えた方がよい。

2020年5月に東京高等検察庁検事長の賭けマージャンが週刊誌の報道で明らかになった。これは高位の法務官僚が賭博行為で社会的・政治的責任を問われた極めて異例のケースとして大きなニュースとなった。

新型コロナ緊急事態宣言下に、新聞記者らと賭けマージャンをし、賭け金は1晩あたり数千円〜2万円前後(点5~点20程度)で月に数回行っていたと報道された。本人が事実を認めて辞職願を提出、政府は「訓告処分」したうえで、辞職を認めた。本件は東京地検が捜査し、2020年7月に「不起訴処分(起訴猶予)」発表している。

このようにギャンブル(賭博)は禁止とされていながら例外や、線引きの曖昧さが残る。前述の警察庁によるオンラインカジノの実態調査によれば、かなりの人がオンラインカジノを合法と思っている実態があるが、警察当局はこれらを明確に違法として取り締まりを強化している。事業者に対する規制や指導が進められているが、手を出さないようにすべきだ。

細川 幸一 日本女子大学名誉教授

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

ほそかわ こういち / Koichi Hosokawa

専門は消費者政策、企業の社会的責任(CSR)。一橋大学博士(法学)。内閣府消費者委員会委員、埼玉県消費生活審議会会長代行、東京都消費生活対策審議会委員等を歴任。著書に『新版 大学生が知っておきたい 消費生活と法律』、『第2版 大学生が知っておきたい生活のなかの法律』(いずれも慶應義塾大学出版会)等がある。2021年に消費者保護活動の功績により内閣総理大臣表彰。歌舞伎を中心に観劇歴40年。自ら長唄三味線、沖縄三線をたしなむ。

 

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事