「60代女性の頭皮のにおいを嗅いだ瞬間…」《臭気判定士》下水管、靴下、わきの下──あらゆる異臭・悪臭を約30年嗅ぎ続けた仕事のリアル
「これは、におい・かおり環境協会の文献にも載っている方法なのですが、例えば、きゅうりを手に持ってにおいを嗅ぐ。そうしたら、“青臭い皮のにおい”、“ウリのようなにおい”など、できるだけ具体的な言葉で表現する。
その繰り返しによって『きゅうり=青臭い皮のような、ウリに近いにおい』という認識が脳に強く刻み込まれていき、その後、似たようなにおいに出会ったとき、“きゅうり? いやちょっと甘いか?”とか、正しい判断ができるのです。嗅覚の情報は記憶を司る『海馬』という部分で処理されているので、においと記憶はがっちり結びついているんですよ」
香水の香りで昔の恋人を思い出す──そんな経験がある人もいるかもしれません。それもまさに、この仕組みから起きている現象なのだそうです。
さらに興味深いことに、アルツハイマーで話せなくなった人が、ぬか味噌のにおいを嗅ぎ続けたことで子供時代の記憶がよみがえり、再び言葉を取り戻したという事例もあるのだとか。においが記憶を呼び起こす力のすごさを感じます。
史上最“恐”のにおいは? 嗅いだ瞬間「息が止まった」
百戦錬磨の石川さんが「これまでで一番きつかった」と振り返るにおいは何か? 使用済みの靴下や、男性20人のわきの下をかいだ時も、「なかなかに強烈だった」そうですが、それを上回るのは、ある60代女性の頭皮から発せられた強烈な加齢臭だと言います。
「とあるメーカーからの依頼で、10代から60代まで約40人の女性の頭皮を嗅ぐという仕事をした時のこと。一人ひとり頭部だけが見える状態になっているところにアクリルの筒を置いてひと嗅ぎするんですが、ブラインドテストだったので、何の心の準備もなくノーガードで臨んでしまって。とある方のにおいを嗅いだ瞬間、本気で息が止まりました……」
対照的に、20代半ばまでの女性の頭皮からは、48時間シャンプーをしなくても「ラクトン」という甘い脂っぽい良い香りがするそうです。
「若い女の子のにおいを合法的に嗅げると知ったら、この仕事を目指す人が増えるかもしれないな、なんて(笑)」

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