「60代女性の頭皮のにおいを嗅いだ瞬間…」《臭気判定士》下水管、靴下、わきの下──あらゆる異臭・悪臭を約30年嗅ぎ続けた仕事のリアル

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そんななか、次第に本来の業務範囲を超えた「におい」の相談が、石川さんたち臭気判定士の元にやってくるようになります。

「メイン業務はにおいの測定ですから、現場へ行ってにおいの発生源を特定したり、におい問題の解決策を提案したりするというのは、業務外のことだったんです。しかし、そういったニーズが増え続け、関わらざるを得なくなりました。

さらには、2社目の消臭剤メーカーに移った頃から、“市販の消臭剤や空気清浄機の性能評価をしてください”といった相談もくるように。しかし、ノウハウもなければ、基準も測定法もない。“じゃあ、どうやって測ったらいいんでしょう?”なんて聞かれる始末で(笑)。その方法まで考えるなど、気づけば“においの何でも屋”と化していましたね」

経験を積み独立。今でも仕事の依頼が途切れないワケは

この現状をふまえ、環境省の外郭団体「におい・かおり環境協会」は「臭気対策アドバイザー」の資格を創設。こちらは臭気判定士として10年以上の実務経験を積み、論文と面接をクリアした者だけが取得できるため、さらに狭き門ですが、石川さんは見事合格しています。

「現在の資格保有者は日本全国で約200人ほど。その後、悪臭だけでなく、生活環境や心地よいかおり環境の形成にも貢献することを期待して『におい・かおり環境アドバイザー』制度も立ち上げられました。当時の状況を鑑みると、これらは私が創設のきっかけになったと言っても過言ではないと思いますよ」

そう言って、石川さんは少し誇らしげに微笑みます。

こうして“においのスペシャリスト”として着実に経験を積んだ石川さんは、2010年にフリーランスに転身。今では臭気判定士会の理事も務めています。独立後も依頼は絶えず、営業活動をしなくともコンスタントに仕事が舞い込むそう。

「会社員時代に幅広い業務に携わり、人脈も広げていたことが活きているのだと思います。特に、住宅のにおいをチェックする仕事は、私が2社目で担当するまで他にやっている人間がいなかったため、“石川なら対応できる”と口コミが広がってくれたのかと」

作業服の石川英一さん
作業服で取材に応じてくれた石川さん。基本はこのスタイルで現場に向かうそう(撮影/梅谷秀司)
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