「60代女性の頭皮のにおいを嗅いだ瞬間…」《臭気判定士》下水管、靴下、わきの下──あらゆる異臭・悪臭を約30年嗅ぎ続けた仕事のリアル
次に活躍するアイテムが、活性炭入りのマスクです。
「弱いにおいを含め、集中して嗅ぎ続けていると嗅覚が麻痺してくるので、このマスクでリセットをかけるんです。実はハンカチでもいいし、自分の服や肌のにおいを嗅ぐことでもリセットできるんですよ」
他にも、細身で軽量の「ライト」、ペンチ・カッター付きの「ミニ工具」などが、石川さんの仕事かばんの中に並ぶ“スタメン”だそうです。

仕事に必要なのは“鼻のよさ”より“ライブラリの豊富さ”
お話を聞いていると、臭気判定士の仕事は、特別な嗅覚を持つ者だけができる神業のように思えるかもしれません。ですが、石川さんはそれをきっぱりと否定します。
「大切なのは、特別に鼻が利くことよりも、頭の中にどれだけ“においのライブラリ(経験データ)”があるかなんです。知らないにおいを嗅いだとき、人は脳内にある一番近いにおいの記憶と結びつけて、その正体を判断しようとします。
だからライブラリにストックがないと、例えば下水の臭いを嗅いで、“これはアンモニアですかね”なんて、まったく違う原因を疑ってしまい、いつまでも発生源にたどりつけない。結局は、地道な経験の積み重ねこそが、この仕事のすべてなんですよ」
では、その「ライブラリ」はどうやって育てていくのでしょうか? 石川さんは、ここでもユニークな訓練法を教えてくれました。
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