「60代女性の頭皮のにおいを嗅いだ瞬間…」《臭気判定士》下水管、靴下、わきの下──あらゆる異臭・悪臭を約30年嗅ぎ続けた仕事のリアル

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現在、石川さんの主な顧客は日本を代表する大手デベロッパーや、ビルメンテナンス会社です。加えて、生活用品メーカーおよび化粧品メーカーや、個人からの依頼が入ることも。なかでも「建物から原因不明の異臭がする」といった相談は、後を絶ちません。

なぜ石川さんに、さまざまな規模のクライアントから依頼が集中するのか? そこには確かな実績に加え、“価格”という大きな理由がありました。

「どこかの企業が業務として調査を行うと、どうしてもコストがかさみ、1件あたり15万〜20万円ほどになってしまう。対して私は、1件あたり7万〜8万円で請け負います。もちろん現場に行ってみるまでは状況がわからないので、プラス料金をご相談することもありますが。このように、コスト面が抑えられることに加え、そもそもいち企業では受けられないような案件も多々あるため、巡り巡って私のところに依頼が来るんです」

デジカメやマスクを片手に、“においの発生源”を特定

石川さんが現場に赴く際の相棒のひとつは、細かい状況を撮影するデジタルカメラ。

「現場調査でにおいを嗅ぐときは、ものすごい集中力でその場のにおい情報と視覚情報を収集するため、メモを取る余裕がありません。だから、とにかく現場の状況を全て写真に撮っておく。そして、後からPCの大きな画面で記憶と照らし合わせながら分析するんです」

例えば、異臭がするというマンションの部屋に到着した際には、玄関で立ち止まり、鼻から大きく息を吸って、じっと空間を観察。時には、床に這いつくばって空気の流れを感じることも。

「そうして、“これはカーテンのにおい”、“玄関の置物のにおい”、“建物そのもののにおい”など、その空間にあるべき『におい』を消去法で一つずつ消していく……すると、最後に残る『不明なにおい』が苦情の原因だとわかるんです」

目を閉じる石川英一さん
「残されたにおいがわかるまで、あらゆる感性を研ぎ澄ませ続けます」と石川さん(撮影/梅谷秀司)
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