中原:もっとも米・欧・日の株価については、米国の利上げを機に激震が生じるというレベルの話にはならないでしょう。先進国で金融規制が強化されている昨今では、リーマンショックのような世界的な金融危機は起こりえないからです。
ただ、マネー経済が膨らんだ副作用として、震度6や7のような激震は起きないにしても、震度2や3の小さな揺れが断続的に起こることは不可避であると思われます。要するに、マネー経済の膨張を沈静化させるために、これからは短中期的なハードランディングではなく、長期的なソフトランディングが主流となってくるわけです。少なくともあと数年は、先進国の株価は高値を更新できないばかりか、もやもやとした展開が続くことになるのではないでしょうか。
米国経済の減速が大きな転換点に
三井:それでは、2016年が大きな転換点になるとは、具体的に何を指しているのでしょうか。

中原:むしろ私は、チャイナショックにより暴落の憂き目にあった世界の株式市場よりも、米国の利上げによって世界の実体経済が大いに減速するのではないかと懸念しています。不謹慎な言い方をすれば、近年ほど世界的な金融緩和が行われたのは歴史上初めてであり、米国の利上げによってこれから何が起こるのか、壮大な経済実験が始まろうとしているとも思っています。
米国で利上げが行われることによって懸念されるのは、米国経済自体が減速に向かう可能性を高めてしまうということです。
まずは、ドル高がいっそう進むことによって、米国の輸出の伸びが止まってしまうということが想定されます。米国の大企業は海外の売上げ比率がすでに3割を超えているので、ドル高が進行すれば進行するほど、業績の伸び悩みが鮮明になってしまうのです。大企業の業績が鈍化するようになると、賃下げや解雇など雇用環境の悪化も心配しなければなりません。
次に、ローン金利が幾分でも上昇することによって、住宅や自動車など高額消費を中心に、好調な国内消費が勢いを失ってしまいかねないということです。利上げは株価の押し下げ圧力としても作用するため、高額消費にとってはローン金利の上昇とともに、二重の逆風となることも考えられます。さらには、利上げ前の駆け込み消費が、最近の消費を底上げしているという事実も見逃してはいけません。こうしてみると、私たちが強いと思っている米国経済は、意外にもろいところがあるといえるでしょう。
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