三井:その代表的な例は「リーマンショック」になるのでしょうか。
中原:その通りです。この経済的な大事件が起こったのは、実体経済に対してマネー経済があまりにも膨張しすぎたことが原因でした。当然ながら、実体経済とマネー経済の間にある不均衡は、その後の世界的な大混乱を通じて、少しずつではありますが解消に向かうことになりました。
ところが、リーマンショック後の金融危機対策として世界的に行われた金融緩和によって、実体経済とマネー経済の間にある不均衡は、それからわずか数年のうちに再び拡大する傾向に向かい始めます。そして今では、経済的な激震が再び起こってもおかしくないレベルにまで、双方の経済間の不均衡は膨らんでしまったのです。
さらには、世界第2位の経済大国となり、米国経済をものすごい勢いで追いかける中国経済においても、需要と供給の不均衡が広がりすぎて、不均衡が限界に近づいてきています。リーマンショック後の世界経済を救ったといわれる4兆元投資が原因となって、需要に対する供給能力が拡大しすぎたために、経済の構造的な大調整が不可避となっているのです。
世界金融危機の再来はあるか
三井:リーマンショックの歴史や教訓を学べなかったということですね。
中原:そうですね。歴史を振り返ると、実体経済に比べてマネー経済が膨張した時には、高リスク投資が活発化するのは避けがたい事実です。
その意味では、世界各国の中央銀行が緩和ドミノに陥っている現状は、過剰なマネーが金融市場や不動産市場に流れ込むことを助長し、バブルの生成に加担しているといえます。世界の中央銀行は、あるいは世界の金融市場は、リーマンショックを歴史の教訓として生かすことができなかったようです。
三井:中原さんはご著書の中で「2016年は世界経済が大きく転換する年だ」と述べられておりますが、それはリーマンショック級の激震が再び世界経済を襲うということでしょうか。
中原:チャイナショックによって、米・欧・日の株価はすでに大きな調整を強いられましたが、2016年に向けて、金融市場の動揺はまだまだ続きそうな状況にあります。米国の利上げをきっかけに、株価は2015年9月の水準すら保てなくなる可能性があるからです。
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