「女にできる仕事じゃない」と言われて火がついた…老舗豆腐店・4代目が継いだ父の“頑固一徹な味”と挑む“新たな売り方”

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落ちた衝撃によって水漏れしないように、ビニール袋で包む心遣いも(筆者撮影)

自動販売機のニーズが高いのには、ほかにも理由がある。実は、しもだお豆腐店の商品はスーパーではあまり手に入らないからだ。

スーパーとの大型取引を断ってまでも守った豆腐の味

もともとしもだお豆腐店はBtoCではなく、飲食店や学校、病院など業務用の直接卸を中心に事業を展開してきた。以前はスーパーにも納めていたが、加熱処理をしていないしもだお豆腐店の商品の賞味期限は3〜5日と短い。日持ちをさせたいスーパーから加熱処理を求められた先代が「そんなのは豆腐じゃない!」と取引をやめてしまったのだ。

「経営者の立場からしたら、取引先が減ってしまうなんて怖すぎますよね。当時はほとんどのスーパーに卸していて、従業員も30人くらいいましたが、売り上げが大幅に落ちて規模を縮小。いまは従業員数も半分くらいになっています。

それでも、父は、加熱処理をすると、お豆腐の風味が10〜20%落ちると譲りませんでした。前世は武士だったんじゃないかと思うくらい、頑固一徹なんですよ」

結果的には、そのときの3代目の決断が、下田の豆腐を特別なものにした。「『下田さんのお豆腐は大豆の味がする』とずっと買いに来てくださるおばあちゃんもいます。離乳食用におぼろ豆腐を買ってくださっていた方が、『ほかのお豆腐を買ってみたのだけど、子どもが吐き出してしまって食べなかった』とおっしゃっていて、赤ちゃんにもわかってもらえるのかとうれしくなりました」。変わらない味は、老若男女問わず、多くのリピーターを生み出している。

父の代でスーパーとの取引をやめて以降、営業も一切してこなかった。しかし、こだわりの豆腐は地元のスーパーの目に留まる。「ふるさとの食と心で、明日を照らす」を掲げる高知のスーパー「サンシャイン」から声を掛けられ、4年前から週に1〜2度ポップアップで出店するようになった。

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