「Yahoo!天気アプリ」にZ世代がなぜ殺到? 《盛らないSNS》があぶり出す"緩い承認欲求"の深層
Yahoo!天気の「みんなの投稿」機能が従来のSNSと決定的に異なるのは、完全匿名でありながら現在地の位置情報と強く結びついている点だ。投稿時には「晴れ・くもり・雨」などの天気アイコン選択が必須だが、その下の自由記述欄(最大60文字)に思い思いのコメントを書き込める仕組みになっている。
投稿内容は現在地周辺の地図上に吹き出しアイコンで表示され、同じエリアにいる人々の声がリアルタイムで可視化される。世界中の人とつながるX(旧Twitter)とは対照的に、「今この場所で何が起きているか」「近所の人は何を感じているのか」といった身近な好奇心を満たす体験を提供している。
特徴は、拡散機能や「いいね」数の表示が一切ないことだ。数値指標を排除した設計により、「バズを狙うより、ただ気軽に独り言をつぶやく」利用者が大半を占める。共感を示す手段は「参考になった!」ボタンのみで、直接の返信機能もない。
実際の投稿内容も多岐にわたる。「今起きた」といった起床報告から、「セミの鳴き声」という季節テーマでセミになりきって「今日は休み」「冬虫夏草に寄生された…」とユーモラスな投稿をする例まで見られる。「大学がだるい」「仕事頑張る」といった学生・社会人それぞれの日常が混在して表示される様子は「ゆるさ満点」で、暇つぶしに眺めるだけでも面白いとの声が多い。

なぜZ世代の心をつかめたのか
Yahoo!天気の予想外の人気の背景には、Z世代を中心とした若者のデジタルコミュニケーション観の変化がある。XやInstagramが「いいね」の数やフォロワー数による競争、アルゴリズムによるエンゲージメント至上主義に支配され、「疲れを生む場」になりつつある中、Yahoo!天気は意図せずして、まったく異なる価値提案を提供した。
とくに注目すべきは、この世代の位置情報共有への抵抗感の低さだ。
かつて大流行した位置情報共有アプリ「Zenly(ゼンリー)」では、10代女子の6割が利用経験者で「Zenlyなしでは学生生活に支障が出る」とまで言われた。Zenly終了後も後継サービスに多くの若者が移行し、2023年時点で10代の約7割が何らかの位置情報共有アプリを利用中との調査もある。
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