「Yahoo!天気アプリ」にZ世代がなぜ殺到? 《盛らないSNS》があぶり出す"緩い承認欲求"の深層
もう1つの重要な要素が、「盛らない」コミュニケーションへの志向だ。2022年頃から急速に普及したフランス発の写真SNS「BeReal.(ビーリアル)」では、日本国内ユーザーの83%を14~27歳のZ世代が占める。1日1回ランダムな時間に通知が来て、友達同士が飾らない日常の写真を共有し合うこのサービスは、「SNSっぽくないSNS」として若者に受け入れられた。
Yahoo!天気の「みんなの投稿」における何気ない一言のやりとりも、そうした「ありのまま」志向と通じるものがある。投稿には写真や動画を添付できずテキストのみ、収益化も拡散機能もなしというシンプルさゆえ、承認欲求や自己ブランディングとは無縁の「純粋さ」が保たれている。

ネット上では「昔のTwitterみたいで懐かしい」「最近のSNSに疲れてたから丁度いい」といった声が散見され、デジタル疲労を抱えたユーザーの避難所として機能しているようだ。
深刻化するリスクと課題
一方で、この「偶然のSNS」には見過ごせないリスクも潜んでいる。匿名性と位置情報の組み合わせは、悪用の意図がある場合、極めて強力な触媒となりうるためだ。現に、利用者の間では早くも懸念の声が上がり始めている。
最も深刻なのは、完全匿名をうたいながら位置情報が特定されるという矛盾した設計だ。自宅や職場から頻繁に投稿すると地図上の同じ地点に表示されるため、居場所を特定されるリスクが高い。悪意ある第三者が特定の地点を監視し続ければ、投稿内容から生活パターンを推測することも可能だ。
例えば、「毎晩21時頃に○○公園近くから『ただいま~疲れた』と投稿する人がいる」といったパターンから、「この辺に住む誰かが毎晩その時間に帰宅している」という推測をされる懸念がある。この問題は、Z世代のプライバシー意識の低さが拍車をかけている。
すでに、プラットフォームの悪用を示唆する投稿もあるようだ。とくに懸念されるのは「マッチングアプリ的な投稿」だ。「25歳男性、渋谷駅で退屈しています。誰か話しませんか?」といったメッセージを投稿することは容易で、これはプラットフォームを出会い系として転用する行為にほかならない。
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