「え!ちゃんと説明したでしょ…?」実はあなたの言葉、9割以上が届いていないかも……その理由とは?

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実験の結果は衝撃的だった。合計120曲がリズムで出題されたが、リスナーが正しく曲名を言い当てられたのはたった3曲、正答率わずか2.5%だったのだ。ところがタッパーたちの予測はどうだったのか? 彼らは自分のタップした曲をリスナーが当てられる確率を50%程度(半分は当たるだろう)と見込んでいた。

つまり実際には40回に1回しか伝わっていないのに、タッパーは2回に1回は伝わると信じていたことになる。この認識の差は実に20倍にも及ぶ。

なぜ話し手と聞き手の認識にギャップがあるのか

この現象が起きる理由は簡単だ。タッパーがリズムを叩いている間、彼らの頭の中では曲のメロディがはっきりと流れているからである。

タッパー本人には「タン、タンタタタン……」という叩く音が、頭の中のメロディと重なり、意味ある音楽として聞こえている。しかしリスナーには、机を叩く単調な音が途切れ途切れに聞こえるだけだ。どんな曲か見当もつかないのは当然だろう。

にもかかわらず、タッパーは自分の頭の中で鳴っている曲がリスナーにも伝わっているはずだと信じ込んでいた。これは心理学で「知識の呪い」とも呼ばれる現象で、自分が知っていることは相手も知っていて当然だと思い込んでしまう認知バイアスだ。

いったん何かを知ってしまうと、その知識がない人の立場を想像するのは、とても難しい。タッパーは曲を知っているがゆえに「このリズムであの曲だとわかるはず」と思い込んだ。リスナーの知らない状態を想像できなくなっていたと言えるだろう。

私どものようなコンサルタントは、この「知識の呪い」を強く意識している。ずいぶんと気を付けているつもりなのだが、それでもついつい相手も知っている前提で話してしまう。

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