名探偵シャーロック・ホームズが駆使する「観察力」と「聞く力」の鍛え方 証言「事件のあった夜、犬は吠えなかった」の意味するところは?
バスの中やカフェで、周囲の人に目を向ける(ただし、くれぐれもストーカーに間違われないように!)。練習を重ねるうちに、スキルは自然に身につくだろう。
この才能においては、ホームズは誰もが認める第一人者だ。
『第二の汚点』では、冷静さを失わず、絨毯の血痕がその下の床板には付着していないことを発見した。事件を解決に導いたのは、何人もの警察官が見落とした、この血痕だった。同じく『フランシス・カーファクス姫の失踪』では、棺の底が通常よりも深いことを鋭く見抜いている。「最初から明々白々だったんだ。残念ながら、僕の目が節穴だった」と、もっと早く気づかなかったことを悔やんだとはいえ。
言葉の意味を汲み取る「聞く力」
視覚的な観察力だけでなく、聞き取る力も大事だ。
『フランシス・カーファクス姫の失踪』でホームズは、事件の解決につながった前日のとっさの発言を思い起こして、「夜が明けるころ、その言葉を思い出したんだ」と打ち明けた。
また『まだらの紐』では、恐ろしい事件の犯人は別にして、ホームズは他の登場人物の誰よりも真夜中の「低いはっきりとした口笛」が鍵になるとわかっていた。
つまり、目で見たことに意味を与えるだけでなく、音が示すことも理解する、ずば抜けた才能があるのだ(しかも、じかに耳にしたのではなく、その場に居合わせた者から伝え聞いた)。
有名なエピソードがある。物音については、実際に耳にしたことと同じくらい、耳にしていないことも重要だとホームズが推理してみせたのだ。これは「夜中に犬に起こった奇妙な事件」、すなわち『白銀号事件』で吠えなかった犬のことである。