名探偵シャーロック・ホームズが駆使する「観察力」と「聞く力」の鍛え方 証言「事件のあった夜、犬は吠えなかった」の意味するところは?

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

安心してほしい。たとえシャーロキアンのレベルまで頭脳を使っていないと感じていても、訓練次第で機能は向上する。これは、よくありがちな自己啓発のメソッドなどではなく、科学的に証明された事実だ。

人間の脳は驚くほどタフで、どれだけ多くのことを要求されようと、成長して対処できるようになるのだ。必要なのは、新たな課題に取り組む準備だけ。

証拠はあるのか?

たとえば、ロンドンの公認タクシー運転手。この資格を得るには、数年間かけて『ナレッジ試験』と呼ばれる試験を受けるが、ロンドン中心部のチャリング・クロスを起点とする半径10キロ以内の何千もの通りを含む320の主要なルートを覚えなければならない。受験生は通常、海馬(記憶をつかさどる脳の部位)が大きくなることが報告されている。

もっとも有名な運転手は、1980年にテレビのクイズ番組で優勝したフレッド・ホウセゴだろう。彼は有名人となってからも、運転免許を更新しつづけた。

ホームズがことあるごとに、ハンサム馬車の御者から情報を得ていたのも不思議ではない。

「観察」とは「見た情報を脳に伝達すること」

ホームズの観察眼に並ぶ者はいない。事件現場をぱっと見ただけで、ほかのみんなが見逃していた手がかりを見つけるのだ。『ボスコム谷の惨劇』では、「僕のやり方はわかっているはずだ。とにかく細部の観察に尽きる」と述べている。なかには生まれつき観察力の鋭い人もいるが、努力と訓練によって伸ばすこともできる。

見ること(目で知覚すること)は簡単だ。

それに対して、観察(目によってもたらされた情報を脳に伝達すること)は、意外と難しい。たとえば、ごく親しい人が、この前会ったときにどんな服装だったか覚えているだろうか? あるいは、いまさっき追い越された車が何色だったか。隣家の自家用車のナンバーは?

『バスカヴィル家の犬』でホームズが指摘しているように、「世の中は、誰の目にも明らかなことばかりなのに、はからずも見落とされている」

ハードルが高いと感じたら、毎日の生活で意識的に「観察」してみよう。

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事