「助手席に監視員?」テスラ≪ロボタクシー≫始動2週間で露呈した“現実”

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テスラの安全監視員は、そのまま道路の中央に停止していると危険なので「乗車再開」ボタンでロボタクシーに安全な場所へ移動するように指示した。ところが、ロボタクシーのシステムはどういうわけか1分弱にわたってそこにとどまっていた。

ロボタクシーに乗降する乗客
安全な場所でロボタクシーに乗降する乗客(写真:Tim Goessman/Bloomberg)

別の乗客は、ロボタクシーに乗って動画を撮影している最中に、不意に自動運転システムが急ブレーキをかける「ファントムブレーキ」現象に遭遇した。

ファントムブレーキ現象は、LiDARやレーダーを搭載せず、カメラ映像をAIで分析して走行するテスラの自動運転システムで、たびたび発生している。今回の例は、進行方向が西に傾いた太陽に正対するかたちになってしまったせいで、自動運転システム用のカメラが視界不良状態になったのが原因と考えられた。

他にも、自動運転システムが道路脇の速度標識を見落として制限速度より時速18kmも高い速度で走行したり、狭い路地で路肩に駐車している車の脇をうまく通り抜けられず、駐車している車両に軽く接触してしまったり前方からバックしてくる配送バンを認識できずに追突しそうになったりする例が報告されている。

問題発生の傾向としては、ロボタクシーは乗客が乗り降りする駐車場や、交差点付近で何らかのエラーを多く起こしているようにみえる。これは単に、直線の道路を走るのに比べ、交差点ではAIが複雑なタスクをこなす必要があるからかもしれない。

この記事を執筆している時点では、ロボタクシーは人身事故などは起こしていない。だが、報告された例のひとつでは、路上に買い物用のトートバッグのようなものが落ちているのを認識してすぐに停止したものの、自動運転システムが問題ないと判断したのか走行を再開し、そのまま踏み潰すようにして通過した例もあった。もしあのバッグが、酔い潰れて路上に横たわった人だったら、ロボタクシーはきちんと停止していられただろうかと思わずにはいられない。

これだけの不具合があったにもかかわらず、招待された乗客の大半は、ロボタクシーに対して好意的な評価を下していた。テスラが招待した乗客のほとんどは、テスラ株主やテスラに好意的なインフルエンサー、テスラファンのXユーザーなどだったからかもしれない。

数年先の進化具合に期待

Waymoとテスラ・ロボタクシー
Waymo(左)に比べて見た目はスッキリしているテスラ・ロボタクシー(写真:Eli Hartman/Bloomberg)

イーロン・マスク氏に先見の明があることを疑う人はいないだろう。一方で、マスク氏は目標に定めたことを実現するために、リスクを取ることもいとわない。SpaceXでもそうだが、普通なら実現不可能に思えるような高い目標を設定しては、幾度もの失敗を重ねることで、目標の達成に近づいていく手法を好む。

今回のロボタクシーも、Waymoのそれに比べると、現状ではまだまだ足りないところがたくさんあるように見える。だが、今後しばらくして、テスラがロボタクシーの招待制を解除し、一般の乗客がこの自動運転サービスを利用し始めたときに、どのような評価が下されるのか、そして、数年を経た先にそれがどうなっているかは、楽しみであるとともに期待したいところだ。

タニグチ ムネノリ ウェブライター

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たにぐち むねのり / Munenori Taniguchi

電気・ネットワーク技術者として勤務したのち、Engadget 日本版(閉鎖)でウェブライターとして執筆開始。以降、Autoblog 日本版(閉鎖)、Forbes JAPAN、Gadget Gate、Techno Edgeなどでグローバルなトピックを中心に執筆。得意ジャンルはIT・ガジェットからサイエンス、宇宙、自動車・モータースポーツ、音楽・エンタメ、ゲームと幅広い。

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