「助手席に監視員?」テスラ≪ロボタクシー≫始動2週間で露呈した“現実”

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2024年10月、テスラとイーロン・マスク氏はイベント「We, Robot」を開き、2人乗りクーペタイプの新型電気自動車「Cybercab(サイバーキャブ)」を発表した。このクルマは、運転席から⁠ハンドルやペダルを取り払い、完全自動運転を購入者に提供するという。マスク氏は、サイバーキャブを2026年か、遅くとも2027年には発売すると述べた。

ハンドルがないテスラ
ハンドルがないテスラCybercab(写真:David Paul Morris/Bloomberg)

さらに、マスク氏は完全無人運転によるロボットタクシーサービス、いわゆる「ロボタクシー」を2025年に開始することも発表した。ただ、サイバーキャブの発売は2025年には間に合わないので、まずは既存モデルのModel Y(またはModel 3)に完全自動運転が可能なバージョンのFSDシステムを搭載した車両を使うとした。

ちなみに、テスラの市販EVに用意されているAutopilotや、Full Self Driving(FSD)オプションは、その名とは裏腹に、常にドライバーがハンドルを握り、周囲の安全の確認に責任を持たなければならない、先進運転支援システム(ADAS)の域を出ていない。そのため、近年ではアメリカ当局からの命令により、テスラはFSDオプションをSupervised FSD(監視付きFSD)と呼び、表記するようになっている。

マスク氏が言うようなロボタクシーサービスを2025年に開始するためには、テスラは完全に無人で公道を走行できるバージョンの自動運転システム、Unsupervised FSD(無監視FSD)を用意する必要がある。

テスラのロボタクシーの仕組みは?

ロボタクシー(Model Y)車内のようす
ロボタクシー(Model Y)車内のようす(写真:テスラ)

テスラにとって、完全に無人で走行するロボタクシーを開発するのは難しいことだったが、お手本はすでにあった。すでにアメリカのいくつかの都市で自動運転ロボタクシーによるサービスを展開しているWaymoだ。

Google(Alphabet)の子会社であるWaymoのサービスは、あらかじめ自動運転車両が走行可能なエリアを設定しておき、車両が搭載するGPSの情報をもとに、制限エリア内⁠でのみサービスを提供する「ジオフェンス」と呼ばれる仕組みを採用している。

この仕組みでは、自動運転車両はGPSなどの外部サービスのデータだけに頼らず、事前にエリア内の道路の車線や一時停止標識、縁石の状態、横断歩道の配置などを詳細に記したカスタムマップデータに加え、LiDARやレーダーなどが走行中に取得するリアルタイムデータを、人工知能(AI)で処理して、常に正確な道路位置、道路状況を把握しつつ、安全な運行を行う。

マスク氏は以前より、「ジオフェンスが必要なら、それは本当の自動運転ではない」と発言して、自社のAutopilotやFSDを宣伝してきた。

だが今年5月には、ロボタクシーサービスの開始にあたって、「ジオフェンスを使い、問題なく走行できると確信できない交差点がある場合は、(安全のために)それを迂回するルートを走行する」と述べるようになった。

また、オースティンの公道ではまず10~20台のロボタクシーを走らせ、招待した乗客にのみサービスを提供するとし、⁠さらに安全確保のため、遠隔操作のための人員を多数配置して、「人間の運転手よりもはるかに安全」になるまでは、AIがすべてを処理して走る監視なし自動運転は提供しないと述べた⁠。

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