しかし、住人からの依頼はシンプルだった。
「すべて捨てて、部屋を空にしてほしい」
すでに生活に必要なモノは取り出しているとのことだったが、趣味のモノはほとんど残されたままだった。

段ボール箱に書かれた「B・I・O」の意味
現場に入ったスタッフは5名。モノの量自体はそこまで多いわけではないので、通常であれば2時間ほどで作業が完了するような現場だ。しかし、今回の予定は3時間。その理由は「仕分け」にある。
「ご依頼は『ゴミ屋敷』という括りでしたが、我々から見ればこれはゴミではありません。大半が趣味のモノや細々としたモノです。これらをすべてゴミとして処分することもできますが、そうすると廃棄料金が膨れ上がってしまうんです」(二見氏、以下同)
イーブイは徹底した仕分けによってゴミの量を抑え、依頼者の金銭的負担を軽くしている。そのために、再利用できそうなモノはゴミとして処分せず、いったん事務所にある倉庫へ持ち帰る。

同社が片付け時に使っている段ボール箱には、「B(貿易)」「I(インターネットオークション)」「O(古物市場)」と書かれている。マジックで丸をつけることで、倉庫に持ち帰った際にすみやかに分別することができる。
そんなイーブイの倉庫には、現場から運び込まれた「有価物」がたくさん積まれている。その多くを占めるのが「B(貿易)」行きのモノたちだ。
「これらは日本国内では再販が難しいモノです。しかし、海外、とくに東南アジアなどの発展途上国では需要があります。缶バッジのような小さなグッズ、ぬいぐるみ、食器、生活雑貨……今回の現場であれば手づくりのコスプレ衣装も引き取り手がいるかもしれません」


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